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女神の不手際で異世界転生! 最弱な俺が目指す『一発逆転』サクセスロード  作者: おといち


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3話 Welcome to ISEKAI! そして第1町人

ーーー

ーー


「……ん?」


気が付くと、俺はどこか柔らかい地面の上に座り込んでいた。

目を開けると、容赦なく差しこむ光に少し涙が出る。


「ここが異世界…なのか?」


立ち上がり、ズボンに着いた土を掃う。

段々と光に慣れてきたその目に映し出されるのは、見渡す限りの草原。

そよそよと優しい風が緑を揺らす。そして見上げれば青い空に、白い雲。

先ほどまでいた天国のような場所に比べれば、前世の世界との違和感みたいなものはほとんどない。

もしここに『Welcome to USA!』という看板が立っていたら「あぁ、ここはアメリカなのか」と信じてしまいそうだ。

…アメリカなんて行ったことないんだけどさ。

強いて言うなら、空気は幾分おいしい…ような気がする、うん。

まぁ異世界といっても、人が暮らしている世界だ。そんなものなんだろう。


ーーいや、待てよ?


「人間、暮らしてるよな?」


そういえばあのア…エリザから、この世界についての説明はほとんどされていない。

精々『スキルというものがあること』と『魔物や魔法が存在すること』ぐらいだ。

人間というものが存在している世界だとは、一言も聞かされていない。


いやいや、流石のエリザも「人類は貴方一人!あとは魔物だらけのハーレムよ☆」

みたいな世界には飛ばさないだろう。

…飛ばさないよな?一応、罪滅ぼしの異世界転生だもんな?

とはいえ、現時点で周囲に人の影は見当たらない。

魔物がいることだけは確定している世界でこれは、ぶっちゃけかなり心細い。


とりあえず、このままここで一晩過ごすわけにもいかない。

日はまだ高いが、いつ沈むかもわからない。そもそも今の時間がわからない。

周りを警戒しながら、辺りを少し散策してみよう。



何分経っただろうか。

あてもなく草原を彷徨っていると、遥か彼方からこちらの方に向かって来る()()が見えた。


「人?魔物?…人!人であれ!いや、善人であれ!」


向かってくる何者かが魔物であれば、転生から一時間と持たず俺の第二の人生は終わることになる。

もし人間だとしても、こちらに敵意がないとは限らない。

淡い期待で自分の体をあちこちペタペタと触ってみるが、武器の様な物は何も持たされていない。

…エリザさん、チュートリアルはもうちょっとしっかりしてください。文字通り人生がかかっています。


あれこれ考えている内にも、こちらとの距離は徐々に縮まっている。

それに連れ、その姿も次第に明らかになっていく。

どうやら人…人型ではある。そして、なにか馬のような物を引いているみたいだ。



どんどん、どんどん、近づいて来る。むしろ向こうはこちらを警戒していないのだろうか?

ひょっとして、俺みたいなちっぽけな存在を警戒する必要もないほどの強者なのでは?

そんな俺の焦りをよそに、カラカラという車輪の音が、ガラガラとその主張を増していく。


「馬車と…女の子?」


こちらに近づく者。その正体は、荷を引く馬を連れた女性だった。

一見すると、盗賊には見えないが…ええい!イチかバチか、声をかけてみるしかないか?

そもそも言葉が通じるかどうかも賭けだが、このまま野垂れ死になんてごめんだ。

ここは運を天に任せるしかない。


あぁ、神様ーーは、エリザか。駄目だな。

あぁ、仏様。哀れなわたくしめに、どうかお導きを。

俺はその女性に、できるだけ警戒させないよう少しだけ速足で近づき、声をかける。


「あ、あの!すみません」

「はい?」


お、どうやら言葉は通じるみたいだ。助かった。


「ちょっとお尋ねしたいことがあるんですが」

「…えーっと。私、ですか?」


きょろきょろ辺りを見回して、その女性が聞き返してきた。


「はい。あ、ナンパとかじゃないんです!

あの、ここから人の住んでる所までって、どう行けばいいでしょうか?」

「あら、もしかして迷子さんですか?」

「ま、迷子さん?まぁ似たようなもんですかね」


否定は出来ない。確かに今の俺は、迷子レベル100といった境遇だろう。


「まぁ…どこから来たんでしょうか?そう遠くない所なら案内できますが」


異世界です。…なんて言えるわけもないよな。いきなりそんなこと言ったら不審者全開だ。

ここは上手いとこ誤魔化すしかないだろう。


「あー、いえ…訳あって元の町にも居場所がないもので」

「そうなんですか?」

「実は親が死んで帰る家もなく…。

それで途方に暮れて歩いていたら、知らない所まで来てしまっていたようで…」


嘘は言ってない、言ってないが…。

これ、かなり苦しい言い訳じゃない?大丈夫?セーフ?


「それは…苦労されたんですね。

そうだ。それなら私の住んでいる町まで案内しましょうか?ちょうど私も戻るところなので」


セーフ!…この子、いい人が過ぎないか?おじさん逆に心配です。


「いいんですか!?ありがとうございます!

…あ、すみません。自己紹介がまだでしたね。俺、月島 幸助っていいます」

「ツキシマ・コースケさん…珍しいお名前ですね。私はフィゼといいます」


おっと、この世界だと日本名はあまり馴染みがなさそうだな…。

とはいえ、今更偽名ってわけにもいかないだろう。とりあえず今後はコースケで通すか。


「フィゼさんですね。よろしくお願いします。俺のことはコースケって呼んでください」

「はい、コースケさん。それでは町まで案内しますね」


兎にも角にも、どうにか人が住む町までは行けそうで安心した。

…ところで、エリザさん?流石に投げっぱなしジャーマンが過ぎませんかねぇ?

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