32話 いざ王都
前話(31話)の後半部分に、大きく加筆しております。
『二人組の男の名前』に聞き覚えが無い方は、お手数ですが31話を一度読み直してからこちらを読むことを推奨します。
すみませんが、よろしくお願いします。
ギルドでの密談から十日余り、俺は悶々とした日々を過ごしていた。
幸いギルドマスターであるオズワルドさんが話を通してくれたらしく、フィゼさんやベティスさんが
その密談に関して、何かを聞いてくるようなことはなかった。
が、お世話になっている二人に隠し事をしているのは、あまり気分は良くない。
しかもその内容は、この町の人達にとっても決して無関係とは言えないものだ。
そんなことを考えながら客室の掃除をしていると、どうも店の外の方が騒がしくなってきた。
「なんだ?何か揉め事か?」
「おう、コースケ。お前に客だぞ。…オズワルドだ。」
「オズワルドさん…。」
なんとなくの経緯を察した俺は、申し訳ないがベティスさんに掃除の続きをお願いしてフロントへと向かう。
「やぁ、コースケ君。おはようございます。」
「おはようございます。外がなにやら騒がしいようですが…。」
「…えぇ。表に王都からの馬車が停車していますからね。物見高い方々が遠まきに見学されていますよ。」
…そう。それはつまり、”契約のポーション”を護送するための馬車が到着したということだ。
「さて、それではギルドの方で話をしましょうか。」
「はい。」
表に出て停まっている馬車を横目に見ながら、ギルドの中へと入る。
先日も使った応接室へ通されると、中には既に先客がいた。
「あ、コースケ君!…やっぱり君も呼ばれたんだね。」
その場に居たのは、サーシャさんだった。ドレルさんとレミリアさんはいないみたいだな…。
「これでこちら側は全員揃いましたね。ギルドの代表者。ポーション発見の当事者である道具屋の店主。
…そして、それを鑑定した者の計三名。それが今回、王都への同行を命じられたメンバーです。」
やっぱり、呼ばれるよな。正直ここまでは想定内だ。
コンコン
部屋がノックされる。オズワルドさんが入室を促すと、見知らぬ顔が四人、部屋に入ってきた。
男性が二人と、女性が二人。
「失礼する。王都より参った、今回護衛を務めさせていただく者だ。」
「えぇ。道中何卒よろしくお願いいたします。」
「王都へは長旅となる、お互い軽く自己紹介を済ませよう。私はファブリル王国騎士団所属、ガルドだ。」
金属の鎧に身を包んだ、如何にも騎士然とした恰好をしている人だ。
こういうステレオタイプな騎士というのは、こっちに来て初めて見たかもしれない。町の衛兵さんはもっと軽装な人が多い。
「同じく、エドガーです。」
こちらもガルドさんと同じような出で立ち…年齢はもう少し若いだろうか。
王国の騎士というのはこういう恰好がデフォなんだろう。うーん、解釈一致ですね。
「同じく、ラムレスです。よろしくお願いします。」
こちらの女性は打って変わって軽装である。杖を持っているところをみると、魔法使い…ってことなのかな?
それにしても、フィゼさんのそれと比べると随分と大きい。…もちろん、杖の話だ。
「…レイアです。よろしくお願いします…。」
「こちらのレイアも同じく騎士団所属です。」
今にも消え入りそうな声での自己紹介に、隣に立っていたラムレスさんからの補足が入る。
こちらの女性は背中に弓を担いでいる。所謂、アーチャーってやつか。
それにしても、護衛って四人もつくんだなぁ…しかも結構ガチガチの”パーティー”って感じだ。
…もしかして、そんなに道中危険なものなんですか?いや、念のため…ってことですよね?そうですよね?
「私はオズワルド。こちらでギルドマスターを務めさせていただいております。」
「わ、私はサーシャです。道具屋の店主です。えっと…よろしくお願いします!」
「俺はコースケです。ポーションの鑑定をしました。よろしくお願いします。」
俺が自己紹介をすると、護衛の方達が少しざわめき出した。
「君が…。いや、すまない。君のような若さで鑑定士というのは、私も聞いたことがないものでな。」
「隊長。」
「あぁ、そうだったな。エドガー、あれを。」
「はい。」
どうやら、護衛隊のリーダーはガルドさんみたいだな。
そのガルドさんが促すと、エドガーさんが一つのポーションを取り出しガルドさんに手渡した。
「すまないがコースケ君。このポーションを鑑定してみてもらってもよろしいか?」
「は、はい。」
どうやらテストされてるみたいだな…。まぁ、無理もないか。
ポーションを受け取り、さっそく鑑定を試みる。
【アイテム鑑定】
【ポーション 効果:対象にかかっている様々な【呪い】の効果を解呪する。】
解呪?まさかこれって…。
「出ました。効果は呪いの解呪…これは、”解呪のポーション”ですか?」
「その通りだ。念のため国から持たされてな。…それにしても、どうやら間違いなく【アイテム鑑定】持ちのようだな。」
「…凄い…。」
「試すような真似をしてすまなかった。だが、出発の前にどうしても確認しておきたくてな。」
「いえ、大丈夫です。」
護衛する対象に不信感を持ったままでは、護衛どころではないだろう。
とりあえずこれで俺の【アイテム鑑定】と”契約のポーション”、どちらも本物であると認めてもらえたらしい。
…後は道中、特になにも起こりませんように…!




