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女神の不手際で異世界転生! 最弱な俺が目指す『一発逆転』サクセスロード  作者: おといち


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30話 忌むべき過去と、産物と

「…そいつは言えねぇな。」


い、言えないって言っても…もうほとんどバレてるようなもんなんですけど…。


「…困りましたね、ドレルさん。それではこの話を先に進めることができません。鑑定結果が確かな物である…

その前提が必要な話ではありませんか?…コースケ君、でしたね。貴方もそうは思いませんか?」

「え!?あー…そ、そう…ですかね?ははっ…。」


ほら。もう俺、完全にロックオンされちゃってますよ…。


「…うるっせぇなぁ!わかったよ。じゃあ俺が今この場でこいつを飲んでやる!!

そしたら頭でっかちのおめぇにもこのポーションの真贋がわかんだろ!!」


そう言うとドレルさんは、机の上にあったそれを乱暴をつかみ取り、栓を抜いてしまった。

ま、まさか本当に飲む気なのか…!?


「えぇ!?ドレルさん、いくらなんでもそれはまずいって!」

「お、落ち着いてください!…あぁもう、マスターも止めてください!」

「…はぁー。わかりました、ドレルさん。…わかりました。これは”契約のポーション”である…その前提で話を進めましょう。」


オズワルドさん、もう半ばヤケクソじゃん…。普段からこんな感じなんだろうなぁ、この二人。…心中お察しします。


「わかりゃあいいんだよ。」

「そ、それでその…オズワルドさん?奴隷制度とは一体どういうことなんですか?」

「…奴隷という存在自体は、嘆かわしいことに特別珍しいものではありません。

品の無い貴族達が金に物を言わせ人間を買い、労働などを強制する…そこに人権は存在しません。」

「…えぇ。そういった話を聞かないわけではありませんが…。」

「そうなんですか?うーん、私は聞いたことないんですけど…。」

「そうですね。少なくとも、我が国ではあまり馴染みのない話です。…それも”今となっては”の話ですがね。」

「今となっては?」

「この国では昔、国の事業の一環として奴隷の斡旋を行っていました。それが奴隷制度です。」

「く、国の事業!?そんな…。」

「…マスター、詳しく聞かせてください。」

「…100年ほど昔、一人の調合師が新種のオーダーメイドポーションを発見しました。

それこそがこの、”契約のポーション”です。」


100年前…この下劣なポーションは、そんな昔からこの世界に存在していたのか…。


「それまでにも奴隷というものは存在していましたが、所詮は仮初の契約…

逃亡、時には奴隷同士が決起して反乱が起こることもありました。」

「そんな時に使われたのが、この”契約のポーション”ってわけだ。」

「服従…つまり、奴隷にされた方達が逆らおうとする思考すら奪ってしまう…。」

「このポーションが発見されると、国はすぐにその調合師を保護…いえ、軟禁して

”契約のポーション”を作ることを強要しました。そしてそれを貴族達に高値で売り捌き、莫大な利益を得たのです。」

「最ッ低…!」

「そして遂には奴隷というものを公に認め、国の発展のための労働力として使い始めました。

…現在のオーダーメイドポーションの発展には、この奴隷の存在が大きく関わっています。」

「オーダーメイドポーションの発展に…?そ、それってまさか!?」

「…そう、人体実験です。オーダーメイドポーションの効果だけなら、【アイテム鑑定】さえあればわかります。

しかし、効力や影響力の大きさは、実際に使用してみなければわかりません。」

「そんな…!オーダーメイドポーションの歴史が、そんな汚れたものだったなんて…。」


サーシャさんはショックを隠しきれない様子だ…無理もない。自分が常日頃取り扱う…

そのアイテムの中でも貴重な物とされているオーダメイドポーションが、奴隷制度による産物だったと知ってしまったのだ。

否が応でも、複雑な感情が頭の中を巡ってしまうだろう。


「だがな、こいつはとうの昔に存在が抹消された筈の代物なんだ。なんだってこんなところに…。」

「存在が抹消…ですか?」

「えぇ。民衆の反感も大きく、奴隷制度は十年余りで撤廃されました。それでも”契約のポーション”自体は

しばらく存在し続けましたが、ある時そのポーションを作れる唯一の調合師が亡くなってしまったのです。」

「唯一?他に作れる人はいないんですか?」

「オーダーメイドポーションのレシピは、トップシークレット中のトップシークレットです。

高値でレシピを売る場合もありますが、このポーションに関しては発見者が絶対にレシピを洩らさなかったそうです。」

「なるほど…。」


まぁ作れる人間が増えれば増えるほど、利益が得られなくなるもんな。


「でも、偶然同じポーションが発見されたって可能性はないんですか?」

「レシピ無しでのオーダーメイドポーションの再現は非常に困難です。どの素材を、どの順番で、どの量調合するか…。

どんなに僅かな違いでも、決して同じ物は作れません。…可能性は限りなく低いでしょうね。」

「ということは、どこかでデッドストックのような物が発見された…ということでしょうか?」

「その可能性も低いだろうな。…今から約40年前、この国の国王が代替わりした時に、

恥ずべき歴史の象徴である”契約のポーション”は国を挙げて回収作業が行われ、そして破棄されたんだ。」

「んー。そうは言っても、誰かがこっそり隠し持ってたりしたんじゃない?」

「そりゃ最初の内はあったさ。ただ、このポーションには一つ重大な欠点みたいなものがあってな。」

「欠点ですか?」

「ポーションを服用した人間は、額に印が浮き出るのです。これは奴隷印と呼ばれていました。」

「なるほど…つまり隠し持っていたところで、額を見られれば使用したことが知られてしまうということですね。」

「そうです。そして、使用が発覚した際は族誅(ぞくちゅう)…即ち、一族諸共極刑に処されるということです。」

「お、恐ろしい話ですね…。」

「実際、とある貴族が一度やらかしてな。そっから回収作業は一足飛びに進んだってわけだ。」


つまり、その貴族は滅んでしまったってことか…。

そりゃそんなの見せられたら、いくらなんでも隠し持っておこうだなんて思わないよな。


「…しかしマスター。それ以前にポーションを飲まされてしまった奴隷の方達はどうなったのですか?

それにその奴隷印ですが、その印が回収命令以後の物であるかの区別もつかないと思うのですが…。」

「あっ、確かに!」

「ご安心を。このポーションですが、”解呪のポーション”でその【服従状態】の呪縛を解くことができます。」

「え!?なんだ、そうだったんですね。」

「あたりめぇだろ!じゃねぇと俺だって『飲んでやる』なんて言わねぇよ!」


…いや、もし解呪前にその奴隷印とやらを誰かに見られたらどうするつもりだったんだ…。恐ろしすぎるわ。


「…この”解呪のポーション”も、人体実験の最中(さなか)に見つかったオーダーメイドポーションの中の一つです。

他にも様々な呪いの効果を解くことができる、非常に有用なポーションです。

そしてこの”解呪のポーション”の発見こそが、奴隷撤廃の動きをより大きなものとすることになりました。」

「…皮肉な話ですね。」

「全くです。…これが、この国の恥辱の歴史というわけです。」


それにしても、この”契約のポーション”は一体どういった経緯で今ここに存在しているのだろうか?

なんだか、とても嫌な予感がする…ここにいる全員が、そんな胸騒ぎを覚えているのだった…。

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