2話 チートスキルはノーサンキュー
「ナンデ!?ナンデスキルイラナイ!?スキルトテモベンリ!!」
何もしてないのに、女神様は突然壊れてしまった。
「なんで片言なんすか」
「だ、だってスキルよ!?チート級のスキルさえあれば、誰でも英雄になれるのよ!?」
「興味ないっす」
確かに俺は、一発逆転を夢見ていた。
ただそれは誰かに与えられて得るものではないと思っている。
チート級のスキルというのは、一般的に見れば喉から手が出るほど欲しいものなのかもしれない。
しかし俺はそんなもので簡単に成功してしまう人生に、なんの魅力も感じない。
「興味ないって貴方…よく人から変わってるって言われない?」
「別にスキルっていうもの自体に興味がないわけじゃありませんよ。
ただそんな常軌を逸した力をポンっと与えられることに抵抗感があるというか…。
自分でも上手く説明できないんですが」
「ふーん。そういう人間もいるのねぇ」
まぁそもそも、この状況が既に常軌を逸している気もするが。
「でもねぇ、よーく考えてみて?
貴方が行くのは異世界。魔物もいるし、魔法だって存在するわ。
ーーぶっちゃけこのまま転生しても、マッハでおっ死ぬのが関の山よ?」
マッハでおっ死ぬて。この人ほんとに俗っぽいよなぁ…もう女神感皆無だわ。
「今私のこと女神っぽくないと思ったでしょ」
「あ、はい」
「わーお!正直者ね」
とは言っても、本当にそのチート級のスキルというのには興味ないんだよなぁ。
「ーーじゃあこういうのはどう?
貴方が前世で得ていた知識や能力を、次の世界の基準に合わせてスキル化する。
これなら貴方の美学にも反さないんじゃない?」
「まぁそれぐらいなら…」
確かに、女神様の言うことにも一理ある。
どうやら俺が転生するのは、RPGの世界みたいな場所らしい。
そんな世界で生きていこうというのだから、最低限の力は必要不可欠だ。
俺がドラ○エの主人公だとしたら、最初の町から一生出られないだろうからな。
「そうそう、生き永らえたかったら神様の忠告っていうのはちゃーんと聞くものよ」
「その神様がうっかり俺を殺したくせによく言うわ」
「グッ…!貴方、この数十分で随分言うようになったわね」
「すんません女神様」
「…エリザよ」
「はい?」
「私の名前。神様にだって名前ぐらいあるの」
「そりゃそうだ。あ、俺は月島 幸助です」
「それぐらいわかってるわよ。まったく、あんまり神様舐めないで」
「さーせんエリザさん」
「……貴方ほんとーに面白いわね。転生させた後もちょくちょく様子見させてもらうわ」
面倒見てくれるってことだよな?それともまさか、監視って意味合い…?
ちょ、ちょっと神様相手に調子乗り過ぎちゃいましたかね?
「さてと、ながーい前置きはここら辺にしてーーこほん!それでは望み通り、貴方を異世界に転生させます。
あっちでの肉体年齢は…どうする?子供時代からやり直したかったりする?」
「あー、できればちょっと若返るぐらいで頼みたいかな」
体が子供の時代に戻れたとしても、心はオッサンのまま…。
青春時代のノリに合わせられる自身も度胸もない。
「了解。じゃあキリ良く20歳ってことにしとくわね。
それぐらいの年齢の方がお愉しみも色々多いでしょ?…なんつて!」
全く、これじゃどっちがオッサンかわからんね。
「お愉しみはともかく、それぐらいが助かるかな」
「スキルは前世からの継承。適正化は…まぁこっちの塩梅でやっとくわね」
「うっす」
「それじゃあ異世界へ一名様ーーごあんなーい☆」
「かっるぅー!あーれー!!」
体が、意識が、グルグル回って、飛ばされていくーー
女神の不手際から訪れた、”異世界転生”という一発逆転のチャンス。
ーーいや、チャンスになるかピンチになるか、どう転ぶかは俺次第だな。はは、どうなることやら。
「行ったわね。
さてさて、ご希望通りスキルは超高性能神様式AI(仮)で割り当てたけど、どうなったかなぁー?ってーー」
「なーーーんだこのスキルの数。あいつ存外チートじゃないの」
コースケ、かーーふふっ、やっぱり面白い奴だわ。これは要チェックね。




