23話 そびえ立つギルドの双丘で
時は流れ、俺がこの世界に転生してから一週間が経過した。
この一週間は宿場の仕事を覚えたり、空いた時間で身の回りの必要な物を揃えたり…
後は町の外で剣の素振りに励んだりもしていた。
ちなみに生活品を揃えるための資金は、ベティスさんに頼んで今月分の給金を前借りさせてもらった。
その時ついでに「この間のマッサージ代だ。」と追加の手当を貰ったのだが、
マッサージの話が出た瞬間、フィゼさんが何故かちょっと複雑そうな顔をしていた気がする。不思議だ。
そして今日も元気に宿場の仕事をこなしていると…
「あ、コースケさん。私ちょっと隣に用事があるのですが、よかったら一緒に行きませんか?」
「隣というと…あ、ギルドですか?」
「はい。コースケさん、まだ顔を出していらっしゃらないのでは?」
「そういえば…なにかと忙しくて寄ってませんでした。いい機会なのでお供させてください。」
「えぇ、それでは行きましょうか。」
「はい。ベティスさーん、ちょっと俺もギルドに顔出ししてきますね。」
「おーう。…あ、ちょっと待て!」
裏で作業をしていたベティスさんに声をかけたのだが、不意に呼び止められた。なにか忘れ物かな?
「お前、あんまり目立ったことはしないようにしろよ?特にスキル関係ではな。」
「は、はい。もちろん心得てますよ。」
流石にね。二度あることは三度ある…って、これ駄目なやつじゃん。…あれだ、三度目の正直だ。
鍛冶屋とここでやらかした分、流石に慎重モードでいかせていただきますよ。
「それではいってきます。」
「おう。フィゼ、お前もよく見張ってろ。」
「はい。お任せください。」
「はは…。」
俺、信用されてねぇっす…。
宿場とギルドは併設されているが、建物同士が繋がっているわけではない。
一度外に出て、別の入り口から入り直す必要がある。…とはいえ、徒歩数秒の距離だけどね。はい、到着っと。
ギギィ…
おー、ここがギルドか…。だだっ広い空間に、大きなボード。そして奥にはカウンターが設置されていて、
中ではお姉さん方が忙しそうに働いていた。なんか前世の市役所とか銀行みたいな感じだな。
カウンターのこっち側にも、大勢の人がいる。カウンター待ちの列に並ぶ人、大きなボードを眺める人…
想像していたより、結構普通の町民っぽい人が多いな。
もっとこうガチガチの鎧を着てたり、歴戦の戦士みたいな風貌の人がいるのかと思って期待していたのに…。
「コースケさん。こちらの列に並びましょう。」
「はい。…それにしても、意外と普通の人が多いんですね。」
「普通…と言いますと?」
「いやぁ、もっとこう『THE・冒険者です!』みたいな屈強な人達でごった返しているのかと思ってました。」
「そういうことですか。この町の周辺は比較的平和な地域ですからね。魔物の討伐依頼はあっても下位のものばかりですし。」
「あぁ、なるほど。」
「他の大きな町へ行く際の中間地点として立ち寄られることもあるので、
そういった方達の中にはそのような人も時々お見掛けしますけどね。本当に時々、ですが。」
「ほうほう。」
ま、平和が一番ですわな。…正直あんまり強そうな人がいても治安が心配だし、
なによりそういう人達が必要なほど町の周りが強い魔物で溢れかえっているのは御免だ。
と、そうこうしている間に俺達の順番が来たみたいだ。気が付けば列の先頭へと到達していた。
「次の方…まぁ、フィゼちゃんじゃない。こんにちは。」
「こんにちは、レミリアさん。」
「ふふ、今日も可愛いわねぇ。…あら、そちらの方は?」
「コースケっていいます。先週から隣の宿場で働かせてもらってます。」
「あらあら、そうだったの。私はレミリア。見ての通り、ギルドの受付嬢をしています。
お隣さん同士、これからよろしくお願いしますね?コースケさん。」
「はい!よろしくお願いします!」
おっとりとした、綺麗な人だ…。大人の魅力をムンムンと感じますよ…特に…なぁ?言わなくてもわかるだろう…?
「…コースケさん?」
「……はっ!ど、どうしました?フィゼさん。」
「…もう!なんでもないです!」
「あらあら…。」
い、いかん。レミリアさんのレミリアさん×2を見ていたことがバレていたというのか!?月島幸助、一生の不覚…!!




