22話 不埒なゴッドハンド
風呂を済ませ、俺は宛がわれたばかりの自室で待機していた。
…そろそろフィゼさんもお風呂から上がってくる頃かな?と考えていると
コンコン
と、部屋がノックされた。グッドタイミング。
「どうぞー。」
「お、お邪魔します…。」
おずおずと部屋に入ってきたフィゼさんは、薄い寝巻のような物を着て、その上から肩掛けを羽織っていた。
布面積が少ないわけではないが、結構体のラインが出ているので、見ていて思わずドキッとしてしまった。
それに、お風呂上がりの少し紅潮したフィゼさんの顔…。いかん、いかんぞ俺。平常心…平常心だ…。
落ち着いて素数を数えるんだ…素数ってなんだっけ…?
「じゃ、じゃあ早速、そこのベッドに寝てください。」
「は、はい…失礼しますね…。」
ファサっと肩掛けを手近な棚の上に置き、フィゼさんがベッドにうつ伏せになる。
「それでは俺も失礼して…。」
ギシッ…
俺も続いてベッドに上がり、フィゼさんの足側の方に膝立ちの状態でスタンバイした。
うっ…この体勢、フィゼさんの可憐なヒップが眼前に…!!素数…いや、偶数を数えて落ち着くんだ…!
…よし。先ほど風呂場から持ってきていた大きめのタオルを、そっとフィゼさんの腰元に掛ける。
「…それでは、はじめていきます。…いいですか?」
「は、はい…お手柔らかにお願いします…。」
…
「んっ…!」
……
「そ、そんな…いきなり、そんなところ…!」
………
「あっ…そ、そこっ…気持ちいいです…!」
「1214…1216…1218…」
「コ、コースケさん…?…んんっ!」
「1224…あ、い、いえ。なんでもないです。…というかフィゼさん、ちょっと声抑えてください…。」
「そ、そんなこと言われても…あんっ!!」
ドタドタドタ!!ガチャッ!!
「お、おいコースケ!いいいい今フィゼの声が!」
「あっ。」
突然乱暴に扉が開き、焦った様子のベティスさんが部屋に乗り込んできた。
「ベ、ベティスさん!?ちょっと、ノックぐらいしてください!!」
「うるせぇ!!お前ら二人してベッドでなにしてやがる!!」
「なにって…コースケさんにマッサージしてもらっているだけですけど…?」
ポカン、とした顔でフィゼさんがそう答える。
「…マッサージだぁ?」
「は、はい。」
「……」
「……」
「……」
気まずい沈黙が流れる。まぁ、わかります。わかりますよ。
「ま、マッサージだろうがなんだろうが、若い女が男に肌なんて簡単に触れさせるんじゃねぇよ!!」
「で、でも施術ですから…。みなさん、されてますから…。」
「あァ?知るか!誰だよみなさんって!」
サ、サーセン…。
「…こうなったら、しょうがないですね。ベティスさん、失礼します。」
ボフンッ!
立ち上がったフィゼさんが、さっきまで寝ていたベッドに向かってベティスさんを突き飛ばした。
「イデッ!!おいフィゼ、なにしがやる!」
「…コースケさん、やっちゃってください。」
や、殺っちゃってください!?マッサージを見られただけなのに!?
…って、違うか。この場合…。
「わかりました。…それではベティスさん、ちょっと体、失礼しますね…?」
「!?お、おいお前、俺になにするつもりだ!?」
「へへ、悪いようにはしませんよぉ…おっと旦那ァ…ここ、随分固くなってますねぇ…?」
「お、おうふっ…!」
肩ね。肩。
「おやおやぁ?ククク…ここなんて、随分と張っちゃってまぁ…こいつは揉み応えがありますねぇ…!」
「や、やめろ…んおおっ!」
腰です。変な声出さないでください。マジで。
「た、確かに中々上手いじゃねぇか…だがな…。」
中々しぶといな。だがベティスさん、俺にはまだ、”切り札”があるんだぜ…?
いい年のおっさんがこいつに耐えられるかねぇ…。
喰らえ!必殺の【コンディショニング】!
「お、おぉぉぉぉぉ!?!?」
フッ。堕ちたな。
「………。」
その傍らでフィゼさんが凄い表情をしてこちらを見ていたことを、俺達は知らないのであった…。




