19話 量産型スライムゼリー
「レ、レアスキルなんですか?これ。」
「コースケ…お前さん、王都で働く気はあるか?」
ま、また王都…?
「いえ、今のところは…。」
「…そうか。じゃあその【素材調理】、無闇に人前で使わねぇよう気をつけろ。」
「…あの、使ったらどうなっちゃうんですか…?」
「王都の騎士団やら強豪パーティーやら、とにかく引っ切り無しに勧誘が来る。間違いなくな。」
「…もしその勧誘を断ったら?」
「…良くて国の監視下で軟禁ってところか。下手に他の国に亡命なんてされちゃあ困るからな。」
ひぇー!強制社畜ルート、一本追加!
「そ、そんなに強力なスキルなんですか?」
「いいか?【食材調理】はその名の通り…まぁ飯を作るだけのスキルだ。もちろん厨房では重宝されるがな。
しかし【素材調理】はそんなもんじゃねえ。魔物が持っている特性を”素”としてそのまま取り入れちまえる。」
「えーと…?」
「さっきのヒールスライムを料理に使った時、俺が普通に調理したものを食っても、なんの効果もなかったよな?」
「はい。…あ、味は美味しかったですけど。」
「ところがコースケ、お前さんが【素材調理】で調理したら…どうだった?」
「…!!」
「そうだ。ヒールスライムの特性、”ヒール”の恩恵を料理から得ることができた。」
「そんなことが…。」
「こいつをもっと特異な特性を持った魔物を使って調理しちまえば…後は言わなくてもわかるだろ。」
「…強力な効果を手軽に得ることができる…。」
「そういうことだ。ただ、ここまでなら医者や薬師が作る”ポーション”でも代用できる。」
「まだ他にメリットがあるんですか?」
「ポーションっつーのは大抵、素材から凝縮したエキスを使って調合する。だから、貴重な物ほど量が作れねぇ。
その点【素材調理】は魔物の肉や臓器がまんま素材となる。強力な魔物ってのは、巨大な体を持つことが多い。」
「つまり、ポーションと同じ効果の物をある程度量産できる…。」
「まぁポーションと違って食わなきゃ効果が出ないのがネックだけどな。単純に食う時間も必要になる。
一長一短ある分、もちろん【ポーション調合】も引く手あまたのレアスキルってわけだ。」
「そっちもレアスキルなんですね。」
「そりゃあな。…で、どうだ?国が強引にでも【素材調理】持ちを手中に収めたい理由がわかったか?」
「は、はい…。」
「ま、王都だのなんだの、でけぇ所で働くだけが人生じゃねえ。そういう生き方が嫌なら、隠しとけって話だ。
それに【食材調理】にもメリットはある。」
「あ、そうなんですか?」
「あぁ、”クールタイム”が【素材調理】と比べたら圧倒的に短いとことかな。
基本的に上位スキル持ちは下位のスキルも使える。回転率重視で行くならそっちを回していくことになる。」
「”クールタイム”…?」
「…しゃあねぇな。材料も余ってるし、もう一回【素材調理】でさっきのゼリー作ってみろ。」
「はい。」
【素材調理】
ポンッ!いっちょあがり。
「続けてもう一回、やってみろ。」
「え?ま、まだ作るんですか?」
「いいからやってみろ。」
こんなに作って誰が食べるんだろ…まぁやれと言われればやるけども。
【素材調理】
「な?できねぇだろ?」
ポンッ!いっちょあがり…って、え??
「…アァ?」
「えぇ!?コ、コースケさん!?」
「え!?で、できちゃいましたけど…作ってよかったんですよね?」
「……」
「……」
……?
「お前もう王都でもなんでもでけぇところで働いたらどうだ?」
「えぇ!?!?」
そ、そんなぁ…ベティスはん、さっきと言ってることが違いますやん!!




