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女神の不手際で異世界転生! 最弱な俺が目指す『一発逆転』サクセスロード  作者: おといち


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1話 女神様と俺

……


ーーみる?


はい?


ーーしてみる?


えっ?な、なにを?


「だからぁ。してみる?一発逆転」

「へぁっ!?」


突然の荒唐無稽な問い掛けに、閉じていた目を開け体を起こす。

…俺は死んだ筈では?そもそもここはどこで、目の前にいるこの人は一体誰なんだ?

正直、わからないことだらけだ。


「えーと、すみません。ここは天国ってやつですか?」


とりあえず、その中の一つを訪ねてみる。

俺が天国に行けるかどうかはともかくとして、なんとなく地獄ではなさそうだ。

全体的に明るいし、おどろおどろしい雰囲気は少しも感じられない。


「まぁ当たらずも遠からず。ってところね」

「はぁ…?」


やっぱり死んだのか、俺は。

となると、残る疑問はこの目の前の女性が何者なのかってことだが。

…今更気付いたけど、この人すっごい美人さんじゃん。

透き通るような白い肌に、澄んだ碧い(あおい)瞳…なんて目に入らなくなるような、破壊力抜群の胸元。

マーベラスーーって、俺は死んでまでなに考えてるんだ。


「なーんかやらしい目してるわねぇ…まぁいいわ。で、してみるの?一発逆転」

「いや、そんな軽いノリでしてみるの?と言われても」

「なによ?したかったんじゃないの?」


そりゃ、したいかどうか聞かれたら…まぁ、したいが。

そもそもどうやってそんなことを実現しようというのだろう。


「ムッ。そんなことできっこないって顔してるわね?甘く見ないでちょうだい」


よくわからないけど、えらい自信だな。

ん?待てよ?ここが天国みたいなものってことはーー


「貴女はひょっとして、神様とか?」

「ぴんぽーん♪なにを隠そう、私は女神様よ!」


マジかよ。

というか、神様って随分フランクな感じなんだな。


「貴方、結構理解が早いわね。助かるわ」

「まぁ一度は死んだ身ですから…。もう半分ヤケクソというか、なんというか」


それに、哀しいかな行き当たりばったりの人生に慣れてしまっている自分がいるのもある。


「スれてるわねぇ。もっと明るく生きなさいよ。まぁもう死んでるけど。ふふ」


イラッ


「ところで、あー…女神様?一発逆転と言いますと、具体的には?」

「それは貴方自身が考えること。私がしてあげられるのはズバリ、”異世界転生”よ!」



「異世界…転生?」

「そうよ。貴方を前世とは違う別の世界…つまり、”異世界”で蘇生させてあげる。

こんなこと滅多にないんだから!出血大サービスよ」

「滅多にない?それって、なんで俺なんかが選ばれたんですか?」

「あ…やっぱりそこ、知りたい?」

「それはまぁ」


俺が神様から見ても、超絶哀れな人生を送っていたからだろうか。

いや、それにしてはなんだか急に歯切れが悪くなったな。


「…お、怒らない?」

「へ??」


怒る?なんで?


「………実は貴方が死んだの、私のせいなの」

「へ!?!?」


私のせい?なに言ってんだ、この人。だって俺、車に轢かれて死んだ筈じゃ…?


「私もね?ずーっとここにいるのも暇だから、たまに下界に遊びに行くことがあるんだけどね?」

「はぁ」

「貴方がいた世界に行った時、座標を間違えて道のど真ん中に降りちゃって…ビックリした車がね?」

「はぁ!?

…あ!だからあの車あんなめちゃくちゃな動きしてたのか!」


飲酒運転でもしてたのかと思ったら、そういうことだったのか…。

そりゃ突然車の前に女の人が現れたら、パニックも起こすわ。


「なんてことしてくれてんすか、貴女…」

「ほんっとーーーにごめんなさい!いえ、誠に申し訳ありませんでした!」

「はぁ…で、それで罪の意識から俺をその異世界転生?させて、一発逆転のチャンスをくれると」

「その通りでございます」

「…確かに、あのまま生きてても明るい未来があったとは思えないですけど」

「で、では許していただけますでしょうか…!?」

「まぁ、はい。仕方ないですけど」

「有難き幸せ!恐悦至極!」


これでもかと言うほど下手に出るなぁ。貴女、神様でしょうに。


「あ、ところであの車を運転してた人はどうなったんですか?」

「アフターケアはバッチシよ!というより、あの事故自体が”なかったこと”になっているわ」


それはよかった。

神様の不注意で過失運転致死罪の加害者にされるとか、流石に運転手が不憫すぎる。


「あれ?じゃあ俺もそのまま向こうで生き返ればいいんじゃないですか?」

「…ごめんなさい、それはできないの。

あの世界での貴方の死は、もう”確定した出来事”になってしまっているのよ」

「そういうもんなんですか。まぁそれならそれでいいんですけど。

…ところでその場合、俺の死因ってどうなるんですか?」

「落ちてたバナナの皮で滑って転んで死んだことにしたわ。幸い、目撃者はいなかったしね」

「そんなバナナ…」


どうせ死ぬなら、最期ぐらいもうちょっとカッコよく死にたかったよ。


「ただし元いた世界で新しい人間として『生まれ変わる』ことを望むのなら、それは可能よ。

まぁよく考えてちょうだい」



ーー生まれ変わる、か。

あの世界に、未練があるわけではない。

しかし、何も知らない異世界とやらで、俺が成功することが果たしてできるのだろうか。

それならいっそ、元の世界である程度の知識を持った上で…上で、どうするんだ?

そりゃ今の俺なら、二度目の人生そこそこうまく立ち回って、そこそこ成功することができるんじゃなかろうか。

ただし、あくまでそこそこだろう。あの世界での俺のポテンシャルなんて、所詮その程度だ。

俺の思い描いていた『一発逆転』というのは、そんな”攻略本を持ってゲームをする”ような人生じゃない。



「ーー決めました。させてください、異世界転生」

「そうこなくっちゃ!じゃあ早速、転生先に持っていくスキルを選んじゃって」

「スキル?」

「特別な力から単純なステータス上昇まで、なんでもござれよ!サービスしちゃうわぁ」

「あ、そういうの結構なんで」

「な!?な、なななな、なななな、なななななななーー」


なんだ?バグって「な」しか喋れない玩具になっちゃったのか?

…可哀そうに。


「なんでぇ!?!?」


「な」の玩具が発した一言は、もはや神としての威厳を1ミリも残していなかった。


「なんでと言われても…」


どうやら俺の『一発逆転』サクセスロードは、女神様には理解不能らしい。

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