15話 おっさんおっさん、またおっさん
「それではドレルさん、そろそろ失礼しますね。」
「おう!嬢ちゃん。ベティスのやつにもよろしくな!」
「はい。ラッセルさんにもよろしくお伝えください。」
「ドレルさん。剣、ありがとうございました。」
「いいってことよ。兄ちゃんもありがとな!武器のことで困ったらいつでも来な!」
「はい!」
ドレルさんの店を後にした俺達は、フィゼさんのおつかいも終わったとのことで宿場に向かって歩き出した。
…さぁお待ちかね、俺がドレルさんから貰った剣は…これだ!
【鉄のバスタードソード☆☆☆ レアリティ:2 攻撃力:14 特殊能力:なし】
ショートソードと悩んだが、俺はこのバスタードソードとやらをチョイスした。
小中大とサイズがある時に、ついつい”中”を選んでしまう…これが日本人というものだ。
訓練がてら、時間がある時に素振りでもするか。…町の外だったら振ってて大丈夫だよな?捕まったりしないよな?
「着きました。ここが私の働いている宿場になります。」
「ここが…かなり大きな建物ですね。」
「はい。といっても2つの施設が併設されているので…あちら側の建物は”ギルド”になりますね。」
「ギルド?」
「冒険者の方が依頼を受けたり、希望者が冒険者としての登録を行ったりする場所です。」
「なるほど。冒険者かぁ…。」
「興味がおありですか?」
「いえいえ!俺なんて剣もはじめて握ったような男ですから。」
「あら、魔物と戦うような依頼ばかりではありませんよ?採集だったり、町のお掃除だったり…
あ、コースケさんなら【騎乗】を活かして御者としての依頼を受けたりもできますね。」
「あぁ、そういう感じなんですね。…それなら興味あるなぁ、今度ちょっと顔出してみます。」
「スキル次第では高報酬の依頼もありますから、おすすめかもしれませんね。」
これひょっとして、就活ベリーイージー???最終手段の【アイテム鑑定】で王都社畜コースもあるわけだし…。
いや、収入面も勿論だけど、環境のいい職場が一番だよなぁ。後はやりがいも必要ですよ、やりがいも。
ギルドには日雇いとか短期のバイトを探しに行く感覚で行ってみよう。
「それでは馬車を戻してきますね。」
「はい。…あ、その積んでる荷物下すんですよね?手伝いますよ。」
「ありがとうございます。助かります。」
チリンチリン♪
「いらっしゃい!…とっ、フィゼか。」
「ベティスさん、ただいま戻りました。」
「おう、おかえり。買い出しご苦労さん。…ところで。」
店の奥から、厳つい顔のおっちゃんが俺のことをジロジロと見てくる…なんだかデジャヴを感じるね。
というか、ロイドさんドレルさん、そしてこの人…厳つくてごついおじさま3連発だ…。
あぁ、こうなってくるとサーシャさんが恋しい…ん?ラッセル君?あぁ、いたねそういえば。
「は、はじめまして。コースケです。」
「コースケさんとは帰りの道中で知り合って、町まで馬車を操縦していただいたんです。」
「んなことはどうでもいいんだよ。おう、お前。コースケっていったか。」
「は、はい…。」
「お前まさか、うちの看板娘に手ぇ出してないだろうな?」
「なっ!?ベティスさん!?」
「いいいいえそんな、滅相もない!!」
「あぁ!?うちの可愛い看板娘には手を出す価値もないってことか!?」
「ちがっ、そういう意味じゃなくて…。」
「ちょっと!!恥ずかしいからやめてください!」
「恥ずかしいぃ!?お、お前やっぱり手ぇ出したのか!?」
えええええ…これ、どう転んでも怒られるやつじゃん。回避不可能だよ…。
「…ベティスさん?」
フィ、フィゼさん…?なんかスーパーなんたら人みたいなオーラ纏ってないですか…?
「いい加減にしてくださいね…?私、怒りますよ?」
「い、いや、だってよ…フィゼ、こいつが…」
「ベティスさん?」
「す、すすすすすすまん!!フィゼ、俺が…俺が悪かった!!」
フィゼさん…貴方はもう、怒っています…。怒髪天を衝いています…。
…うん。俺はこの先、この人のことを怒らせないようにすると神に誓おう。
『なぁエリザ。俺、フィゼさんのこと二度と怒らせないから。』
『は??突然念話してきて、意味わかんないこと言ってんじゃないわよ。』
…よし、神に誓ったぞ。




