14話 王都と裏と、やっぱりチートに片足突っ込んでる俺
「す、すみません!勝手にお店の商品を鑑定してしまって…。」
うーん、せめて一言断ってからやるべきだったか。
「か、鑑定…ってまさか!?」
「…さっきの光、おめぇやっぱり【アイテム鑑定】のスキル持ちだったか。」
「えぇ!?【アイテム鑑定】といえば、修得がとても困難なことで知られているスキルじゃないですか!!」
「あぁ。…王都でも持ってる奴は数人しかいねぇと言われてる、レアスキルだ。」
「そ、そうなんですか…?」
おいおい、どうなってんだエリザ…。お前の中の『チートスキル』観、ガバガバじゃねーか!
これだから神様ってやつは。
「そうなんですか、じゃねーよ。ったく、兄ちゃん一体何者だよ。」
「そんな大した者では…。」
「そのスキルを持ってるだけで大したモンなんだよ。…兄ちゃん、お前この先王都で働こうって気はあるのか?」
「!!」
「へ?…いえ、とりあえず今のところそういうつもりはないですけど。」
王都ってつまり、この国の王様が住んでるデカい都だろ?そりゃ興味はあるし将来は行ってみたいけど…
今の俺なんかが行ったら不審者扱いでソッコー御用になるのが関の山だろうな。
【アイテム鑑定】のことで痛感したが、この世界での常識観が無さすぎる。
「だったらそのスキル、無暗に人前で使ったり使えることを話したりしないことだな。」
「と言いますと…?」
「さっきも言ったが【アイテム鑑定】は王都でも使える奴がほとんどいない貴重なスキルだ。
スキル持ちだと知られたら十中八九王都への召喚命令を受けることになる。」
「召喚命令…。」
要は王都で働くことを強制されるってことか。
それは確かに困るな…重宝されるのはありがたいが、社畜ルート確定ってことじゃないか。
そういうのは前世で間に合ってるんだ。
「王都への召喚ならまだいい。…【アイテム鑑定】ってのはいろいろと厄介なシロモノでな。
存在を裏の商人なんかに知られると、勧誘…まぁほとんど拉致に近い状態で裏の世界に引きずり込まれる。」
「うわぁ…。」
「誘いを断ったらまず間違いなく殺されるだろうな。商売敵になるならまだしも、そんなスキル使われちまったら
自分達の回してるモンが非合法品だっつーことが簡単にバレちまう。」
「…怖い話ですね。」
「実際、裏でよくねぇことしてるスキル持ちもいるって噂だ。
だから王都からの召喚命令が降るんだ。保護や監視の意味合いも含めてな。」
持ってることがバレただけで、命の危険があるスキルか…おっかねぇー…。
今後はヤバそうなスキルの使用には十分気を付けよう。
「わかりました。このスキルのことは人目に付かないようにします。」
「そうしな。嬢ちゃんも、このことは他言無用で頼むぜ。」
「は、はい!もちろんです!」
「ま、今この場でそいつを使って武器を選ぶ分には全然構わねぇがな。
なんたってここには俺の自慢の品しかないからな!ガハハハハ!!」
…いやー、ここでこの話を聞いておいて本当によかった。
こういうこともあるからやはり、しばらくは平穏そうなこの町での暮らしを楽しみたい。
ここでいろんな知識を得て、都会で暮らすのはそれからでいい…って、一発逆転からは程遠い立ち回りだよな。
やっぱり歳を取ってしまうとすぐ安定志向に走ってしまうぜ…。かなしいかな。
…この【アイテム鑑定】が後にこの町に大きな波紋を呼ぶことになることを、俺はまだ知らないのだった。