13話 はじめての武器。いい仕事してますねぇ
「おうラッセル、戻ったぞ!」
「あ、お帰りなさい親方。…あれ?なんか随分元気になってません?」
「おうとも!この兄ちゃんのおかげで体もすっかり元通りだぜ。」
「マジすか!?そりゃ良かったっすね!」
「あぁ。これでまたお前のことをビシバシしごいてやれるってもんよ!」
「…あんま良くなかったっす…。」
ジトッとした目で俺のことを睨んでくる、ラッセル君。どんまいラッセル君、頑張れラッセル君。
「うっし、それじゃあここにあるモンどれでもいいから選んでくれや。」
「はい。それではお言葉に甘えて。」
「お買い上げっすか?」
「いやなに、治療の礼に兄ちゃんに好きなモンくれてやるって話になったんだ。」
「…好きなものって、結構値が張るのもあるっすよ?」
「俺がいいって言ったらいいんだよ!」
「うっす。…まぁだいぶ辛そうにしてましたからね、親方。コースケさん、俺からもお礼を言わせてもらいます。」
かるーくぺこりと頭を下げるラッセル君。さすが厳しい親方のお弟子さん、根はまっすぐなんだろうな。
…とりあえず今度フィゼさんにマッサージするかもって話は伏せとこっと。
「ところでラッセル。お前明日までに仕上げなきゃいけねぇやつ、上がってんのか?」
「いっけね!作業に戻りますんで、こっちはお願いします!また来てね、フィゼちゃん!」
「はい。頑張ってくださいね、ラッセルさん。」
「はーい頑張りまーす!」
「まったく…。」
ドレルさんにどやされ、ラッセル君は疾風のようにフェードアウトしていった。フィゼさんへのアピールも忘れない器用な男だ。
あっちの奥が作業場になってるのかな。鍛冶屋の仕事風景も一度見てみたいもんだ。
さて。壁一面に、そして棚や机に並ぶ武器の数々…壮観というか、武器に馴染みのない俺はむしろ怖いぐらいだ。
盾なんかもちょろっと置いてあるが、ほとんどが武器…その中でも剣が大半を占めている。
剣と一口に言っても、でっかい大剣だったりスラッとした細身の剣から、ナイフのようなものまで多種多様。
…これ、どれを選べばいいんだ?当たり前だが俺、マジモンの剣なんて見たことも触ったこともないぞ。
「あのー…武器って触ったことないんですけど、これどうしたら…?」
「あぁん?兄ちゃんその歳で魔物との戦闘経験もないのか?」
「お恥ずかしながら…。」
「ほんと今までよく生き残ってこれたな…。まぁいい。うちには槍や斧なんかも置いてあるが、
まぁはじめてならやっぱり剣がいいんじゃねぇか?うちで一番出るのも剣だし、なにより種類も多い。」
「ほうほう。」
「大きく分けて両手剣。ロングソード。ショートソード。その中間のバスタードソード。
後はその辺の短いのがダガーだ。…まぁ他にもあるんだが、一般的なのはこの辺だな。」
「なるほど。」
「ツーハンデッドソードやロングソードは兄ちゃんには持て余すだろうし、ダガーだと相手にかなり接近しなきゃいけねぇ。
となると、ショートソードかバスタードソードあたりがいいんじゃねぇかと思うぜ。」
「へぇー。この2つって長さ以外になにか違うんですか?」
「いや、長さがほとんど全ての違いになるな。平たく言やぁショートソードが片手持ちの剣なら、
バスタードソードは片手でも両手でも扱える剣ってところだ。取り回しを取るかリーチを取るかだな。」
うーん、それなら片手持ち両手持ちどっちもいけるバスタードソードがいいのか?
でも俺みたいな素人が扱うなら、短い方が扱いやすかったりする…?…正直わっかんねぇ。
「頭で考えてても仕方ねぇだろ。その辺のいくつか振ってみな。」
「あ、いいんですか?それでは失礼して…まずはこれかな。」
ポワンッ
手近にあったショートソードを手に取ると、なにやら目の前にウインドウが表示された。
なになに…【鑑定しますか?はい・いいえ】とな…?鑑定?なんのこっちゃい。
とりあえず『はい』を選択してみるか。
すると、持っていたショートソードが光を放ち、先ほどとは別のウインドウが表示された。
「!!!」
【鉄のショートソード☆☆☆ レアリティ:2 攻撃力:12 特殊能力:なし】
おっ、なんだかゲームみたいだな。こいつは面白い。
「…おい兄ちゃん。アンタ今、なにやった…?」
「えっ。」
「ド、ドレルさん…?」
ドレルさん、なんか怒ってない…?
…あ、もしかして鑑定って勝手にやったら駄目なやつだった!?!?