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チートなスキルで宿屋経営⁈便利な現代技術を使ったら最強冒険者が集まる宿屋になっちゃいました!【恐怖の鹿人間編】

作者: 太陽くん

自分で言うのもなんだが、何を間違ったのか未だにわからない。


俺は間違ってない、間違ってないはずだ。常に正解を選ぶスマートな男、それが俺なのだ。間違いはなかった…はずだ。



現代日本で学生だったから俺は、少子高齢化により内需が縮小する中、これからは海外に目を向けるべきだと考え、幾つかの言語をマスターした。実にスマートな判断だ。


バイト先を探す際、俺は言語能力を生かすべきだと考え観光業に目をつけた。経営的にも安定している企業を探した。決算書も読み込んだ。

その結果が東京都内の一等地に聳え立つ一流ホテルに履歴書を送り込んだ。高時給で雇われることになった。実にスマートだ。


ちょうどその頃、金を持った外国人観光客が日本に押し寄せていた。彼らは裕福で、チップとして俺に金をたくさんくれた。

観光業には未来があると考えた俺は、一流ホテルにそのまま就職した。実にスマートな判断だ。

そのために経営系のゲームをやりこんだりもした。全てが緻密に組み合ったスマートな経営だった。



そうして俺は、ホテルの支配人になった。スマートだ。














そして俺はファンタジー系異世界に転移した。これはスマートではない。クソが。






だが交渉の結果、転生特典とやらを手に入れた。俺のホテルマンとしての力を昇華したものだ。人材育成、職員採用、企画経営、ベッドメイキング、ホテルの設計、接客…なによりも、現代日本の技術を使った設備の再現。これはいい。スマートだ。






俺はこのスキルを活用し、スポンサーを集め、信頼できるビジネスパートナーとともに宿屋を開業した。



みるみるうちに、俺の経営する宿屋は大きくなっていった。当然だ、圧倒的なまでの技術と提供されるサービス。王国一のホテルになるのは時間の問題だった。


世界中の大金持ちが利用する、超一流ホテルにまで成長したのだ。実にスマートだ。

ここまで、何一つとして俺は間違っていないのだ。実にスマートだ。













「モオォォォォォォォオッッッッ!!」


「お客様が暴れているぞ!!担当チームは何をやっているんだ!」


「こちらネルファ-1!こちらネルファ-1!害悪顧客事案発生!害悪顧客事案発生!おそらく飲酒!おそらく飲酒!援軍をお願いします!現地の職員だけでは対処できません!援軍を!」


「スキャン完了!顧客名簿に該当あり!データ共有します!」




Sランク冒険者『オール・バァッファボルト』

クラン 『夜明けの平原』所属

担当 タンク兼デバッファー

種族 獣人(鹿)

全属性に耐性あり。状態異常『恐怖』を与え敵の正常な判断能力を奪う。

保有スキル『大地の力』ダメージの9割をカットします。

正面からの戦闘は避けてください。

酔っ払うため、飲酒耐性のみ解除を行う行動が確認されています。恐怖耐性スキルを保有した職員で構成されたチームで接客を行なってください。



「モォォォォォォォ!!」



「つーかなんで鳴き声が牛なんだよ!鹿じゃないのか⁈」


「ツッコむだけ無駄だ!恐怖耐性スキル持ちは前へ出ろ!!援軍の警備部隊が来るまで持ち堪えるんだ!」


「A34通路に誘導後迎撃だ!バリケードを築け!」


「うおおおおお!何が牛じゃ!全力で相手をしてやる!」


「だから鹿だって!」













『うわあああああああ!牛が!牛がぁぁぁぁぁぁ!怖いよぉ!おかぁさん!』


『言わんこっちゃない!牛が、牛の群れが来るぞ!群れがくるぞォォォォォ!』




支配人室。目の前のモニターでは、暴れる顧客を相手に何人もの警備員たちが命懸けの遅延戦闘を行っていた。


既に援軍の警備部隊は派遣済み。Sランク冒険者でも、所詮は酔っ払い。これで鎮圧はできるだろう。






…さて、夜ももう遅い。仕事はこれまでにして、寝る準備でもするか。


ピロン!!!


『呪いの魔剣の汚染状況報告書』

『ネクロマンサーの異臭対策予算申請について』

『Sランクパーティ『希望の星』結成1ヶ月記念会への出席要請』

『ダンジョン攻略隊への物資輸送隊全滅事案』

『人事部門より 職員の退職に歯止めがかかりません助けてください』

『敵対的買収に対する対応会議』

『諜報部門より。王族に不穏な動きあり』






『支配人へ緊急報告!対象は認識阻害、幻影系のスキルを保持している可能性が高いです!現場の職員は牛の群れと戦闘中と報告していますが、監視カメラにはそんなもの写っていません!あああ、震えが止まらない!!!まさか、映像越しでも状態異常が感染するのか⁈』









ああああああああああああああああああああ!!!

スマートに!仕事をしても!仕事をしても!終わらない!!!

スマート!スマート!スマートォォォォォ!










俺は間違っていない。全ての選択肢を正しくスマートに選んだ結果、こうなったのだ。




俺は知らなかったのだ。

この世界の金持ちが貴族などではなく、力仕事を行う荒くれ者の冒険者であるということを。


宿屋経営なんていうのは結局、お客様の顔色を伺う客商売だということを。権力者には頭を下げるしかないということを。



一つだけ間違いを認めるならば。

俺にプレイするべきだったのは経営シミュレーションゲームではなく、どちらかというと、異常物品を管理するゲームだった。

ガチャと僕のプライベートプラネット 連載中


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