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塩玉真珠



「ほれ。これでどうじゃ」



ぼわわわわわー…!



ウタの腕に、それはそれは神々しい真珠のようなブレスレットができた。



「はぁ…この真珠1個作るのに1トンの塩を消費しとるんじゃよ?」


「わ〜い♡ありがと〜っ!

大好きパパ♡」




ぱ!パパ!!!!


俺の中に稲妻が走った。


ショックを受けて何も言えなくなっていると、デンが横でボソッと声を出した。



「ったく。いつまでも親離れ子離れができねー奴らめ」


「えっ?親子なの?!」


「まぁ育ての親みてーなとこあんだよ」


「そっ、そうなのか…。神の世界も意外と人間みたいに複雑なんだ」


「だからってこの女に惚れるのはオススメしないぜ昴よ」


「ほっ、惚れてねぇから!何言ってんだお前っ」


いやそんなことよりも…だ。



「塩爺、それ…俺にも作ってくれないかな?」


「それって、この塩玉真珠の腕輪を?」


俺はこくりと頷いた。

だってそれがあればかなりの量の塩の効力があるということだろ?

っつーことは、刀が使えない時とかに使用することができるし、そもそも塩の恩恵が受けられるのは有難い。


知ってのとおり、俺は普通の人間じゃない。

<視える>ということは、すなわち<憑かれやすい>ということなのだ。


子供の頃から、それ相応のリスクを背負っていた。

悪霊に憑かれるとかそういうんじゃない。

他人の念を受けやすい、他人のオーラが見える分、昔からそれを吸収して具合が悪くなったり病んだりしていた。

だから俺は、人間を極力避けて、こっちの奴らとばかり付き合い、生きてきた。


好きじゃないのだ。人間が。

俺も人間なのに。


つまり!!


<憑かれやすい>イコール<疲れやすい>なのだ!!!



俺の真剣な表情に、塩爺は「うむ…」と承諾してくれた。


もちろん俺は初めから、ただでというつもりじゃなかったし、塩爺も絶対にほかの神たちのように仕事を頼んでくると思っていた。


しかし……


ボワワワワワワワー…!


「ほれ。」


いとも簡単に玉を作ってくれて、拍子抜けした。

俺の手のひらに今、5つの塩玉真珠がある。


「待って、昴くん。

ブレスレットにするためには、アタイの尻尾の毛が必要だから」


そう言ってたちまちボンッと狸の姿に戻ったウタが、


「ほら、抜いていいよ」


と自分の尻尾を差し出した。


「え……いいの?ありがとう。じゃ、遠慮なく…」


ブチッ


「あぁんっ♡」


「気色わりー声出してんじゃねーよ女狸がぁ!」


「なによっ!デンデンムシ!」


また2匹は喧嘩を始めてしまったが俺は無視をする。


こうして塩爺とウタの毛で、最強すぎるシロモノができてしまった。

腕に嵌めた途端、俺は目を見開いた。

一瞬ブワッと異次元に飛ばされたような、今までに感じたことのない圧倒的な力が自分に浸透した気がした。


神と同等の力を手に入れた。

俺は……神になった。


そう思った。




「あの……いろいろ貰っちゃったし…

さすがに俺、何か手伝うよ。仕事とか…」


初めてそんな言葉を口にした俺に俺が一番ビビった。


「いいんじゃよ。

これは借りを返したんじゃから」


「えっ?」


俺はこの神に何もしたことはない。

どころか、ここに来たのも会ったのも初めてだ。


どういうことか聞こうとした瞬間、幻聴かと思うような言葉が降ってきた。


「昔、おぬしの親御さんに、世話になってのぅ」


「・・・は?」


耳を疑った。

両親は宮城県に旅行に来た時にまさか…ここに寄ったのか……?



「ひと目見た時からわかった。

おぬしが……あの者たちの子だと。

目が……そのまんまじゃからの。」



「アタイも昴を見た時に気が付いたわ。

ずっと待ってた…10年以上も……。

だけどっ…アタイが至らなかったせいで……」



・・・は?


なぜか耳がキーンと嫌な音を発した。

俺は昔から、たまに耳鳴りがする。

原因は分からない。


自分の潜在意識の中で、なにかに対する拒否反応かもしれない。

今もきっと、聞くのが怖いのかもしれない。

それでも……俺はその先を聞いた。



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