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ヒーローの前世の名前:デイン・ステイプルズ(侯爵令息)

ヒロインの前世の名前:エヴリン・フェルトン(伯爵令嬢)

です。よろしくお願いします。

要約すると、今回はヒロインが飛び降り自〇を図る話ですので、苦手な方はご注意ください。描写はふんわり匂わせる程度です。




 私の人生は、本当にツイてない。

 両親はいわゆる毒親だし、婚約者のデイン・ステイプルズは火遊びに忙しいクズだ。


 婚約者は侯爵家の跡取りで一般的に見てイケメンなので、玉の輿を狙う令嬢がわんさかと群がる。

 群がられている側と言えば、ボロっちいドレスを着て壁の華になっている私には目もくれず、お綺麗な成金令嬢とホールの真ん中に陣取ってダンスを踊る。

 私のエスコートは、もちろん一度もしてくれたことなんて無い。

 どんなに仲が悪くても婚約者と踊るファーストダンスすら、一度も踊ってくれなかった。

 会話ができる程度の近距離で顔を見たのも、婚約を結ぶときの顔合わせが最初で最後。


 で、今日…いや、日付変わってるからもう昨日になるのかな?

 ま、もうどっちでも良いや。

 とりあえず、ついさっきまで参加していたパーティで何もやる事がなくて、何となくバルコニーに行って、とてつもなく後悔した。


 何故なら〜なんてわざわざ説明しなくてもなんとなく察してくれるだろうけど、婚約者…いや、あのクズが自分に関わってる事すら意識したくない。あんな最低野郎にはアレで充分。

 アレが、可愛らしい部類に入るだろうメイドに愛を囁き、抱きしめていた。


 お互い、何の感情も無い婚約だって割り切っていた。無関心の方が気が楽だった。でも、何故か、アレから囁かれた愛の言葉に、「あなたには婚約者が…」と躊躇った素振りを見せたメイドへの、


「君さえいれば、何も要らない」


 という睦言同然のソレに、心を深く抉られた。


 私がこのフェルトン家での生存を保証されているのは、アレとの婚約があるから。だから私は、アレとの関係にしがみつく形で生きてきた。

 ウザがられるような忠言をなるべく避けて、下手に興味を持たれて関係を悪化させたく無いから、顔を合わせないように気をつけて。

 関わらないをモットーにしている以上、あまりできることは多くなかったが、それでも自分なりに頑張っていた。


 でも、アレはそんな私の努力を、一瞬でかき消した。本気ではない、火遊びのそれだと分かっていても、蓄積した不満を爆発させるには十分だった。逃げるように、家族を無視して会場から走って年中住み続けているタウンハウスまで帰り、自室に鍵をかけて立て篭もる。しばらく両親たちは帰ってこないだろうけど、念のためにバリケードも作った。

 誰にも邪魔されないことを確信して、屋根裏(自室)に備え付けられている窓を全開にする。


 遺書は書かない。


 衝動的なものだから。

 一言すらも遺したい相手がいないから。

 こんな短時間で書き切れるような恨み辛みは抱いていないから。


「……」


 眼下に広がるのは、見栄で彩られた豪奢な庭。下手したら、植木に邪魔をされるかもしれない。でも、家を囲んでいる植木の綻びを探そうとは思わない。だって、手入れをしているのは私。綻びがないことは誰よりもよく知っている。手塩にかけて育てた花々をダメにしてしまうのは罪悪感を感じるし、死にきれずに中途半端な状態で生き残ることが怖いけれど、それ以上に死への欲求が大きい。


 よりにもよって、真下にあるのは一番手間をかけた薔薇だった。


「ごめんね」


 私の身勝手な理由で、あなたたちをダメにしてしまうことを、どうか許して。




 ──そして私は、薔薇の香りに包まれた。




匂わせ(物理)でした。

ありがとうございました。

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