おしどりに憧れて
鴛鴦の片割れが私の隣に座っている
散り切った花を共にみていて
彼女は私が思っていたよりも地味な色合いで
私が思っていたよりも愛らしい顔をしていた
「君は前に見た子だね。前にいた番の子はどうしたんだい?」
彼女は首を横に振った
その顔が随分落ち込んでいるようにも見えた
「そんなこともあるだろう。鴛鴦の夫婦は毎年番を変えるのだろう?」
彼女は嘴で私を突く
悲しいと言わんばかりに
「・・・彼が良いと。」
彼女は泣いた
三ヵ月と共に過ごせなかった片割れを想って
きっと片割れはもう別の番をみつけているはずだ
そこの湖でキョロキョロとしていたのを見たkら
その子がほんの少しだけ悲しい眼をしていたのは黙っておこう
彼女の事を信じたかったから
おしどり夫婦が目の前を通り過る
彼女に当たる風は冷風で強い
その上では淡い梅色の花が咲き始めていた
私はその花がすぐに枯れ落ちぬように
川を集めた花びらで染めた