結婚詐欺師のグループが中年女性をターゲットに定めて舞台に展開するドタバタ。
とある地方の中小都市の、ジュエリー店で、中年の女性店員は考えた。(10年も勤めて居れば、扉が開いた瞬間にどの程度の商品を購入するか分かるものよ)
入ってきた中年女性に対しても、(たぶん半分冷やかしで、買わない確率が高いわね)と思った。
案の定、その中年女性は安いジュエリーの並んだショーケースを手持ち無沙汰に、暫く歩いて廻っている様にしか観えなかった。
そのジュエリー店の若い女店員がその客に声を掛けた。
(その中年女性、安っぽい格好では無いが、型の古いショウノウの匂いがしそうな50代半ば位の服装で、不平不満を溜め込んだ、今にも爆発しそうな表情をしていた)
その店の従業員は皆、半年も勤めているのだから、スルーした方がよいと気付いてもいい筈、と思ったが、20代半ばで若いために間違えたのだと納得した。
「何かお手伝いしましょうか」
「この並びの商品を全部見せて頂戴」と云ったが、どれも1〜2万円台の物と気がついて、バツが悪くなったのか、
「高価な物は恋人に買って貰うことにしているの」すると、その場には親切過ぎる、若い女店員は
「其れでは、高級な結婚相談所に入会して居るとか?」
<その客はその場の流れで、
「そうよ」と返答したが、その場の従業員は全て、違うなと思った。>
「其れもひとり暮らしで?」
続いてその若い店員は
「ご近所にお住まいですか」とたずねた。
その客は少しイラッとした感じで、「こんな店に電車代かけてくるものですか」と云った。
「この近くの公園に散歩がてら寄ったのよ」
「では、犬を飼っていらっしゃるのですか」
「というか、趣味が近くの公園で犬を遊ばせる事かな」と云うのをその店員が認識した後、
自動ドアが開き、地味目の婚約者同士のカップルが来店した。婚約指輪を求めに来たらしい。
男が30代後半、女が20代前半位で結構歳の差があるようだ。男性が選んだ指輪を高過ぎると云って、女性がワンランク下の物をみせてと云って、言い争いになっているらしい。
そこに、さっきの中年女性の客が割り込んで来て、
「こんな事で遠慮して、安いもので間に合わせたら、安い女だと思われて3年もしたら、飽きて捨てられるだけ。せめて新婚当時だけでも贅沢しなきゃ損。」
と怒鳴り散らした。
挙句にイチャモンを付けてジュエリー店から追い出して終う。
男性従業員は、堪りかねたのか、腹に据え兼ねた様子で、結句その中年女性は追い出されて終う。
一部始終を見ていたその若い女店員は、物陰でメールを打った。
[ターゲット発見]
ある日のジュエリー店近くの公園にて、
70代のイギリス紳士然とした高齢の男、と70才前後の痩せ型の女、髪型やメガネを掛けている点は違うが、確かにあの時のジュエリー店の若い女店員、それと30代の好青年が4人で密談していた。
その視線の差には、ベンチに腰掛けた、黄色のワンピースを着て寛いでいるが、あの時の騒動を起こした中年の女性が居た。
「毎日のように午前中に買い物しがてら、公園で犬やらを眺めながら過ごす。他に趣味も無さそうだから、安くあがりそうだ。」