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ソドム・パラノイア  作者: Y
HELL CAN WAIT
99/301

94:蝿

 あれからどれくらいたったのだろう。私はここで、何日寝転がっていたのだろう。ああ、蝿が飛んでる。部屋に戻らなきゃ、メメメスの頭に卵を産まれちゃうよ……。


「うう、あ」


 腕がないと()()()()()()()()()。でも、力があふれているから、簡単に起きれる。ああそっか、あの飲み込まされた虫みたいな機械って、強くなる機械だっけ……。


「メメメス、どこ?」


 メメメスの首がない。どこにもない。


「メメメス! どこ! どこなの!」


 つまづく。転ぶ。体を支える腕はない。


「おいソドム、大丈夫かよ」

「メメメス? 生きてた……の?」

「ああ、ギリギリで逃げ出してやったよ。まさか狂姫(きょうき)さんたちが……裏切るなんてな…………。つらかっただろソドム。でも安心してくれ、私がいる」

「メメメス! メメメス!」


 メメメスの優しい笑顔、頬に添えてくれた、右手の体温。


「なぁソドム、もう全て忘れて二人で生きようぜ。私達はもうじゅうぶんがんばっただろ」

「うん、そうだね、そうだね……私達がんばったもんね」


 それから私とメメメスは、並んで壁に寄りかかった。


「ソドム。変な話だけどよ、私おまえが好きだぜ」

「うひひ、それどういう意味で?」

「恋みてぇな……気もするぜ」


 顔を赤くした、ピンクの髪の女の子。その顔は私から見ても、とても可愛い、そしてなんだか安心する。


「うひひ、私、()()()()()あんまりわかんないや」

「ああ、今こんなこと言うのもおかしいしな」

「それはおかしくないと思うよ。私達、()()()()()を一緒にすごしてたもん」

「そっか」


 メメメスは私を右手で抱き寄せた。その指が私の、()()()()()()()()()()()()()()にあたる。くすぐったい。


「まぁ恋ってのは言いすぎたかもしれねぇ。でも私はおまえを守ってくよ。腕をつけてくれる人を探すまでは、私が腕に――」


 私はメメメスの瞳を見る。こんな綺麗な目をしていたんだね。


「メメメス、信じてるよ」

「ありがとう、ソドム」


 ああ、私いつまでこんなことしてるんだろう。本当はね、わかってる。メメメスは死んだし、殺したのは狂姫(きょうき)さんだし、私はもうひとりぼっちだ。それにメメメスの生首はなくなってなんかない。今も私の目の前に、転がっていて――――――暗くなった目に蝿が一匹とまってる。


「そっか、腕……ラヴちゃんが研究室に置いとくって言ってたっけ」


 私は立ち上がる。もう倒れていたいのに。なんで? なんで? よくわからないけど……私は、立ち上がった。そして、歩いた。

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