表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソドム・パラノイア  作者: Y
HELL CAN WAIT
97/301

92:博士

 そこにいたのは、本物の博士だった。


「博士! 博士! 博士!」

「おまえの中で作られた薬は本当によく効いてくれているよ。おまえがこの街にくる選択をしてくれたおかげだ。ありがとう、ソドム」


 ギュッと私を抱きしめてくれるその体からは、少しだけ腐敗臭がする。でも、それももうしばらくしたら消えるって、ラヴちゃんがここにつく前に言ってた。これでもう、大丈夫なんだ。大丈夫なんだね。(両腕のない私は博士を抱きしめかえすことができないけれど。)


「博士、狂姫(きょうき)さんは?」

「メメメスにリドルゴの遺品を届けている」

「そっか……。狂姫(きょうき)さんにたくさんお礼を言わないとね。博士を守ってくれてありが――――」

「ああ、だが残念ながらそうはいかないのだよ」


 バチン、嫌な感触がした。あ、これ知ってる。電気だ。


「また()()()()()()()をさせて……すまない、ソドム」


 博士の手の中にあったのは、ラヴちゃんが踏み潰したはずの……リューリーの持っていたあの小さな機械二つ。


「Sリーグ選手の水準の高さの理由の一つ、それがこの装置だ。機能は身体の異常強化、シンプルでいいだろう」


 機械から足が生えて、博士の腕をのぼる。虫みたいに。


「は……博士……危ないよ……」

「安心しろ、おまえも同じ目に遭う」


 しびれて動けない私の口を……指で開いて、もう一つの機械を……。


「んぐっ! あっああああ」


 喉がっ……熱い……体の中に……虫が……。


「あっあ! あああっ あ ああっ!」


 なにこれ……体の中になんかっ、()がいっぱい、いっぱいひろがって……。


「あれぇ? そこのお方はどうしてソドム-Yが持ち帰る前に()()()を使えたんですかねぇ!」


 扉が開く音と銃声、博士の口に入ろうとしていた()が弾き飛ぶ。あれ……ほんとだ、私、博士に薬……渡してない。うあ、だめだ、()()()()()……。


「オリジナルの作る機械は頑丈ですぅ。撃っても踏んでも壊れないなんて! さて()()、これで形勢逆転ですよぉ」

「そう思うかね? おい、いつまで隠れているつもりだ」


 部屋のベッドの影から、立ち上がりその機械を拾ったのは……。


「はぁ、わたくし史上最低の登場の仕方ですわね。ま、いいですわ。()()()()()()


 狂姫(きょうき)さんが、私が飲まされた機械と同じ機械を……飲み込んで……一瞬苦しそうな顔をしてから、微笑んだ。私はこんなに苦しいのに……そっか……狂姫(きょうき)さんって痛いのに強いんだっけ。すごく。


「あららぁ、メメメスと一緒に歩いていった()()()はぁ、()()()()()()()()()でしたかぁ。やりますねぇ、やりますねぇ。つまりあなたが()()()()()()()を持ち去り先回り、私が精製した()()()-()Y()()()の予備を勝手に研究室から持ち出した……というわけですねぇ!」

「げほっ、はぁ、人が()()()()()にやかましいですわよ」


 ラヴちゃ……私……。


「さぁソドム、私と一緒にこの()()()()()から一時離脱しますよぉ。二人がなにを仕込んでるかわかったもんじゃありませんからぁ」

()()()()()()()()のくせに随分と違うものだな。さて、ソドム。おまえはどちらを信じる」


 信じる……。


「お二人さん、いい加減しょうもない演技はやめませんこと? ソドム、メメメスはここですわ」

「え?」


 ベッドの影から蹴り出され、ゴロンと転がるピンクの頭。


「な……なんで?」

「はぁ、もう少し熱演したかったですぅ! ソドム-Y、いやいやソドム、あなたは乗せられたんですよぉ私達の遊びに」

「遊びではない、誤解を生むような言い方をするな」


 ねぇ、なにこれ……。私は、今まで何をしてきたの……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ