85:THE・ハラキリショー
幸か不幸かってこういう時に使われるのだと思う。私達が重症になったことで、決勝戦は延期。これは過去を遡っても、例のない特別待遇らしい。だから幸。
「大好評だったんだってよ」
ソドム-Aの持ってきてくれたおかゆを食べるメメメスは、あまり嬉しそうではない。まぁ、私もだけど。
「すごい名前だね」
「うん。ハラキリってなんだと思って調べたら怖かったぜ」
THE・ハラキリショー。これが私達のあの試合につけられた名前。(これは公式じゃなくて、見た人に言われてるだけらしいけど。)
「で、次の戦いは……」
「うん、改造もある程度なら認められるって」
そう、これが私達に訪れた不幸のほう。あの試合が好評すぎたせいで……突然のルール変更。
「相手のコンビはいいって言ったのかな?」
「さぁな。ここでルール変更しやがるような糞運営だぜ? 断っても通してくるだろ」
私は今夜、ラヴちゃんから改造を受ける。メメメスはもう少し回復してからだから……しばらく手が一個ないまま。
「体の一部をなくすって怖いんだな。顔はさんざんいじったけどよ……これははじめてだ――ってすまねぇ。デリカシーなさすぎたな」
「私はあんまり気にならないタイプだから大丈夫だよ」
「…………」
「ラヴちゃんは感情の個体差だって言ってた」
実際私は足を失ったことに、怖いと思うことはなかった。むしろ博士が作り直してくれたから――――。
「そっか……あっ!」
「ああ! 大丈夫?」
メメメス、手が一個であることに慣れてないんだな。おかゆこぼしちゃったよ。
「私、タオル持ってくるね。熱くなかった?」
「あ、うん。さめてたから大丈夫だ」
部屋を出る時、カチャンと聞こえたのはメメメスがスプーンを置いた音かな?
この家の中を歩いていると、私と同じ顔をした子によくすれ違う。みんな、ソドム-なんとかなのだろうか?
「あら、どうかされました?」
「あ、エッちゃん。メメメスがおかゆこぼしちゃって」
ソドム-X。私より少し年上に見える、私によく似た人。
「そうですか、なら私が代わりに。私はちょうどあなたに、ラヴちゃんが呼んでいると伝えに来たところでしたので」
「そっか、お願いね」
「はい、お任せください」
メメメス……大丈夫かな……。




