8:輸入市
結局、放送枠がなくて私は輸入市の日までにもう一度試合に出ることはできなかった。
「水はそんなに持っていかなくてもいいだろう」
「でも、輸入市で買うと高いし」
「構わんよ、買ってやる。幸いなことに最近まとまった振込があってな、金なら結構あるのだよ」
博士がカードをコンピュータに通すと、もらった金額が表示され……えー! すごいこれ、一級の|プレイヤーのもらう金額みたい。
「えっ! すごい博士! こんなにお金もらうなんて大変なお仕事だったでしょ? お疲れ様」
「なに、実働はしていない。昔とった権利の関係だ」
博士は賢いから、きっと昔なにかすごいものを作ったのだろう。
「それに今日は日帰りだ、そう余分に金を使うこともないだろう」
「そうだね! じゃあ私空っぽのカバン持ってく! 博士が買い物したら全部運んであげるから!」
私は頑丈だから輸入市に何日いても平気だけど、博士はそんなに体力のある人じゃないから、一日で疲れちゃうよね。人たくさんいるし。
「イベントは初日に行くことが鉄則だ。まぁ後半になれば値下がりすることもあるが……やはり良いものを手に入れたいのでな」
「うん、早寝しないとね」
「そうだな、人混みは嫌いだがいたしかたない」
そして、私達は輸入市にできるだけ早く行くためにすっごく早く寝た――――はずだったんだけど……翌朝の博士はとてもとても眠そうだった。
「博士、眠そう」
「ああ、楽しみで眠れなくてな。困ったものだ。珈琲を淹れてくれないか」
「うん、無理しちゃダメだよ」
「私にとって一番の無理は、今日輸入市へ行かないことだ」
ちょっと心配だけど、博士はよく徹夜してるし大丈夫かな。珈琲はちょっと濃い目にしてあげよう。