81:決定権
私は準々決勝で勝ったあと、倒れたらしい。そして目覚めたのは、準決勝当日。
「行けますかぁソドム-Y」
「うん……ごめんねすごく寝ちゃって。メメメスは大丈夫?」
「私は大丈夫だ。ただよ……」
メメメスは凄く暗い顔。どうした……のかな?
「すごく寝ちゃってってことはないんだよ。おまえが倒れたのは昨日だぜ? ったく、どんなスケジュールだよ! なんで後で戦ったソドムが先に準決勝なんだ? しかも開催日の発表あの試合の直後だぜ! ふざけてんのかよ!」
「まぁ、決定権は私達にないですからぁ。さて、今の状況を説明しますよぉ!」
ラヴちゃんはペタッと、私とメメメスのおでこにうんちシールを貼る。
「残念ながらぁ、二人とも万全ではありません! メメメスは無茶すると脳をやりますぅ! そしてソドム-Yは無茶すると精神汚染がぁ悪化しますのでぇ」
「精神汚染なら耐えれるよ! メメメス、今日は私がっ……痛ぁ!」
万全ではありませんと言ったラヴちゃんが私を殴るってどうなの!
「馬鹿ですねぇ。物理的な損傷と精神的な損傷。どっちも治らない時は治らないんですよぉ」
「う……」
「まぁソドム。気持ちは嬉しいがラヴちゃんの作戦を聞こうぜ」
ラヴちゃんの作戦……は、計算に基づいたものだった。メメメスが限界にならない範囲、つまり十五分以内に交代。そしてその後五分休んでメメメスが十分間出場、その後は三分休んで五分間出場。要するにお互い限界が来ない範囲で交代しながら戦うということだ。うう、覚えられるかな。
「一応ゆとりを見た時間ですからぁ、多少伸びちゃうくらいは大丈夫ですぅ! うまいこと交代するんですよぉ、まぁどっちが先に出てもいいですけどねぇ、限界を間違えなければぁ」
「私が時間数えて合図するからよ、頼むぜソドム」
「う、うん!」
それから準決勝の相手の説明を聞きながら、私達は会場に向かう。
「そういえば今更ですがぁ、私の運転はどうですかぁ?」
「う、えっと最近慣れてきたかなって」
「失礼ですねぇ。毎度送ってもらってるくせに」
「い、いや、車に乗ったのこっちきてはじめてだったから!」
いまさらながらに思う。開会式から毎回、会場までラヴちゃんが車で送り迎えしてくれているのって、すごくありがたいことだって。(なぜ今まで車に乗っていることを意識しなかったのだろう。感謝もせずあたりまえのようにすごしていたのだろう。きっとそんな自己嫌悪を私はこれからたくさんするのだろう。でもその自己嫌悪を積み上げても自分を嫌いになりきれないのは、そのあたりまえをくれる人たちがいるからかもしれない。)




