71:エイリアンズ
くそ! くそ! くそ!
「ああもう! 離して!」
左足をとられた。動けないっ、殴りたいのに届かない! 関節技やっかいすぎるよ! はぁ、私の腕も鞭だったらなぁ……。
『くるぞ! ジェイサーの機械仕掛けの締め上げ!』
な、なんの音? 機械が回ってるような……。
「いぎぃいいいいいいいいいい!」
な、何その腕! 関節いくつ、いくつあるのっ!
「ソドム! 手を伸ばせ! そこかからなら届く!」
あ、そっか。タッチして交代すれば……ってだめだよメメメス、今日は戦ったらダメな日ぃいいいいいいいいいいいぎ、足がっ……壊され……!
「はあっ! はぁっ! あれ?」
緩めた?
「いぎぃいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「おまえは壊れることを気にしないタイプだ。だからこのまま壊さず痛い思いをさせ続ける。嫌ならギブアップしろ」
そんなことないよ! 私壊れるの嫌……。だってもう私の体を作ってくれる博士はっ……!
『そんな馬鹿なっ! ソドム-Yむちゃくちゃだ! そんな風に体を捻ったら足が終わるぞ!』
「んぎぎぎぎ!」
「おまえ、壊されたいのか! このマゾヒストが!」
うるさいよサディスト!
「そんなに壊れたいなら壊してやる!」
「んぎぎぎぎっ……なーんちゃってね」
「んあん?」
ジェイサー……だっけ? びっくりして変な声出しちゃっておもしろ!
『な、なんだ今のは! 機械仕掛けの締め上げからソドム-Yが抜け出したぞ! ああ、やはり左足が痛むか! 踏ん張れないソドム-Y!』
予想通り! 力を入れる方向を急に変えたら対応できないでしょ? それに私、このくらいのダメージ、待ってれば治るんだから!
『ソドム-Y転倒……いや! リングを手で叩いて全身を跳ね上げっ一回転っ……からの全体重のせた膝ぁあああああああああああああ! ジェイサー防御間に合わず! 再度サブミッション狙いをしたのが仇になったかぁああああ!』
「ナイス解説! このまま勝たせてもらうよ、ジェイサーさん!」
なんか私の街の実況の人より、安定してるなぁ。
『ソドム-Y! 膝をジェイサーの腹にぶちこんだまま連打! 顔面連打ぁあああああああ! なんという体勢で殴るんだ! 本当にむちゃくちゃだぞこの選手は! ああ! 割って入るドクター! ドクターストップだぁ! 全身でソドム-Yを止めたぁ!』
誰! 邪魔だよ! 邪魔するなら――――。
『勝負あり! 決着だぁあああああああああああ!』
「ソドム-Yさん、それ以上の攻撃は反則になりますよ!」
「誰! なんなのあなたは! 関係ないでしょ!」
「ソドム! やめとけ、運営側の人間だ!」
メメメスが体をぶつけてくれなかったら、私はこの急に出てきた誰かさんを殴っていたかも。いや、一発殴っちゃった……。
「はぁ、はぁはぁはぁはぁはぁ」
呼吸が……止まらない。
「ドクターさん、あんた頑丈だな。今ソドムが入れちまった一発は不可抗力だよな? 私達は反則じゃないよな!」
「はい、私への打撃は問題ありません。低コストで作られていますからご安心を」
私を止めたのは、全身金属製の……ロボット? いや、私もあちこち金属製だからあんまり違わないのか……、なんだろ、まぁいいや。はぁ、足痛っ……。
『DEATH・GIRL・DEATHWIN! 異邦人たちが三回戦出場決定だぁあああ! 暴走暴力装置ソドム-Y! イカれた攻めっぷりに会場は大興奮だぁあああああ!』
勝った勝った、よかったよかった。はぁ、なんか疲れたなぁ、すごく。




