69:カレンダーにシールって貼る?
私は気がつかないふりしか、できなかった。帰宅後、メメメスが私に隠れてこっそり吐いていたのを。(きっと頭が痛いんだ。)
「で、なんの相談ですかぁ?」
「私って、大丈夫なのかな」
この期に及んでメメメスの話からできない私は、死んだほうがいいのかもしれない。(でも私は、生きていかないといけない。誰だってそうでしょう?)
「ふーん、メメメスが心配だって言いたそうな顔に見えますがぁ」
やっぱり、そう見えるのかな?
「だって、私がそんなこと言ったってただのきれ……」
「綺麗事ですかぁ? そんなメメメスの綺麗事に救われて泣いてたのは誰でしたっけぇ?」
私だよ! と心の中で大きな声を出す。実際に出せないのは、ラヴちゃんに殴られた脇腹がまだ痛むせい?
「ソドム-Y、いいですかぁ? あなたはおかしい。精神状態がおかしいんですぅ。だから――――」
「私、こんな私やだよ……」
「あーまた泣いちゃった。酷いですねぇ、あなたの博士は。こんな風にあなたを追い込んでぇ、本当に愛していたのでしょうかぁ?」
私は……博士にも嫌われていたのかな。
「なぁんて、言うと思いましたぁ? あ、言っちゃいましたけどぉ、あれは苦肉の策だったと思いますよぉ? 博士はあの方法でしかスカーレットを攻略できなかった。つまり、そこに愛はあったけど、もっと良い策を練る脳がなかったってことですぅ!」
「……ラヴちゃんは天才だもんね」
「ふふふ、そうですよぉ。あ! 私を天才だと認識したということはつまり、あなたはあなたのラヴクラインを馬鹿だと認識したわけですね――って、学習しないですねぇあなたは」
「う……」
しまった、また手が出てしまった。
「まぁ、今回は許してあげ……ませーん!」
「ぐえっ」
今回は重いパンチではなく、頭に軽いチョップだった。
「いやいやでもあの状況でスカーレットをよく倒せましたねぇ、あんな少ない戦力でぇ。私の手持ちの戦力ならぁ殺せますがぁ……同じ状況だったら負けましたねぇ」
「ほ、本当に?」
「科学者嘘つかない! ですよぉ」
確かにスカーレットの強さは異常だった。本当に、今思い返しても(私が圧勝したけど)異常に強――――。
「スカーレットの炎、オリジナルのラヴクラインの技術でしょうねぇあれは。まぁそれはそうとして……はいこれ」
「な、なにこれ? カレンダー?」
「はい! 名づけて! メメメスちゃん壊れないでカレンダー! これ、私が試合見てメメメスちゃんの具合見てちゃ~んと考えて、がんばらせたらダメな日にはぁ、このシールつけておきますからぁ!」
次回の試合開催日にぺたりと貼られたのは、巻いてる……うんちの形のシール。
「メメメスちゃんがうんちの日! 使えない選手はうんちですよぉ! 科学者は明確にすることが仕事なのでぇ! うんちうんち!」
「もうちょっとマシなのないの……」
「じゃあこれ! ゲボシールぅ! どっちがいいですぅ?」
この最低の二択を答えるまで、ラヴちゃんは私に他の話をしてくれなかった。(どっちも嫌だから最初に出したやつでという、強引な逃げ言葉でうんちシールに決定。)




