67:そこに立つ権利
狭い、真四角のリング。その中に立つのはメメメスとルアン。
『それでは第四十五回暴力的地下遊戯第一試合っ、開始!』
カーンとゴング。ぶつかる拳。
『メメメス、ルアンの足技がさばけない!』
三発ほど打ち合ってからの、蹴り技への変化。速い、それに腕が一本ないせいで重心が読みにくい。
『出たぁ! ルアンの回転蹴りっ! メメメス倒された! そこにスタンピングだぁああ!』
「メメメス!」
危ない! 躊躇せずに顔を踏みにいった。すごい衝撃……避けれてよかったよ。はぁ、なんか自分で戦うほうが気が楽だな。あんな倒れ方したら踏みにこられるに決まってるじゃん……。
「うわっ!」
すごい勢いでメメメスが私の目の前に飛んできて、ロープに跳ねて倒れる。
「メメメス! メメメス大丈夫!」
「ああ、大丈夫だぜ」
「交代しよう! 私なら痛いの我慢して突っ込めるから!」
「大丈夫だ、そこで見てろ」
この戦い、明らかにメメメスが押されてる。ちょっとまって、メメメスが倒されたら私も含めて負けなんだよ?
「メメメス! 代わって!」
答えないメメメスの代わりに、ルアンが私の方を見てニヤリと笑った。うう、馬鹿にしてっ……!
「メメメス! メメメス代わって! 私と代わって!」
ああ、ルアンの相方までこっち見て笑ってる。ううううあああ、どうして! どうして今出てったら反則負けになるの! ああ! タッグマッチって最悪!
「メメメス! メメメスってば!」
うわ、白黒に見えてきた……。なんでだろ、ダメージ受けてないのにセカンドステージ? ああ、そっか。そういえば博士とメメメス一緒にハンターと戦った時、ちょっと上手にセカンドステージが使えるようになってた気が…………。
「メメメス! 今私強いから! 代わって!」
ねぇ、今代わるのは正しい判断でしょ? なに意地はってるの? そんなのいらないから!
『クリーンヒットぉおおお! メメメスっ、ダウーーーーーーーン!』
ほら!
『おおっと! すぐ立ち上がる、大丈夫か! 足がふらついてるぞ!』
「メメメス! 代わって! 代わってってば! 勝てそうにないなら代わって! 私と代われぇえええええええええええええええええええええ!」
嫌な音がした。それから、私の顔にビチャッと血が飛ぶ。(今の私には赤色に見えないけど。)
「め……メメメス…………」
会場が、とても静かだ。




