63:忘れないために
部屋に戻るとメメメスは起きていた。
「ソドム、大丈夫か?」
その声はとても静かで、どこ悲しそうだった。
「うん。私ね精神汚染が……あるんだって」
「そっか。無茶したもんな。まぁ心配すんな、頼りねぇかもしれないけど私も一緒に――――」
「ごめんね、メメメス。私おかしいのかな?」
なんでだろ、なんか最近よく泣いてる気がする。(よく、って何回泣いたら使っていいんだろう。)
「私はよ、頭にきてんだ。リドルゴをぶっ殺されて」
「うん、うん。そうだよね……博士はまだ生きてるもんね、メメメスのほうがつらいよね」
「いや、わかんねぇよそれは。でもよ、なかなか言い出せなかったんだけど……私がここにいるのはリドルゴの復讐のためじゃねぇんだよ」
え…………?
「リドルゴを殺したのはスカーレットだ。それをおまえは殺してくれた、足一本なくしてな。だからよ、手伝いてぇんだよ」
「メメ……メス」
「綺麗事で悪りぃな。だけど私は生きてるやつに自分を使いてぇんだ。リドルゴのこと忘れねぇためにも」
「………………………………嘘だよねそれ」
ちょっとまって、私、何言ってるの?
「嘘じゃねぇよ。安心しろ」
「はは、あはははっ! 嘘だよメメメス! 私は博士が殺されたらそんな風に笑っていられない!」
「そっか」
ねぇメメメス、違うの。私そんな事が言いたいんじゃないの。今だって私のために微笑んでくれたんだよね?
「メメメスは私についてきて自分をごまかしてるんだよ。メメメスの復讐心を私でごまかしてるんだよ!」
なんで? なんでなんでなんで私そんなこと言うの? もしかして――――これが私の、本心?
「怒った? 図星でしょ? ほら、怒れば? 怒ればいいんだよ! 私とメメメスは他人だし、これから利害の一致で一緒にSリーグ目指せたほうがよっぽど――――」
「なぁソドム。リドルゴは死んだ。もうどうしようもねぇんだよ。だけどラヴクラインさんは生きてる、できることがある」
「いい子ぶるために私を利用しないで!」
パン、メメメスが私の頬を叩いた音。うん、そうだよね。
「いい子はおまえだろう! なぁソドム、私を見ろ! おまえについてきたおまえの友達を見ろ! たしかに私もリドルゴが死んでおかしくなってる! だから同じやつに傷つけられたおまえと居ると安心するよ! 復讐だぁ? してぇよ! めちゃくちゃにしてやりてぇぜこんな世界! だけどそんなんじゃ私達は前を向いて生きていけねぇ、笑ってられねぇんだ!」
「…………」
「だからよ、壊れるなよ。私がおまえを支えるから、私を支えてくれよ……」
「なにそれ……」
メメメスは真っ赤な目で涙がこぼれないように耐えていた。そして寂しそうな顔で優しく笑って。
「なにそれって、友達だよ」
そう言った。




