61:DreamもDownもDである
私は虫けらのように、ソドム-Xの巨大な手で叩かれ大事なところが折れた。そしてその後……何度も叩かれ潰れて死んだ……はずだった。
はずだったんだけど……。
はずだったんだけど……まさか、これって……。
「……夢?」
「はい夢です。アリスは夢オチって決まっていますから」
「うわ!」
「ひどいですね、そんなに怖がるなんて」
ソ、ソドム‐X! あなたは夢じゃなかったんだね……。
「どうでした私の淹れた紅茶は。いい夢見れました?」
「そ、ソドム-Xさん……」
うわぁ、私ビビって名前呼ぶしかできない!
「ソドム同士ややこしいので、エッちゃんでいいですよ。今我が家で一番熱いソドムはあなたですから」
なんか申し訳ない気がする……けど、従っておこう。
「えっと……エッちゃんさん。その紅茶って……」
「はい。ラヴちゃんの発明品、自殺者の夢。睡眠時にアリスに殺される夢を見せる、思考限定剤が入ってるんです。どんな夢でした? ゆっくり聞かせてほしいですね」
うわ、一服盛られた。
「可愛かったですよ、寝たまますごくのたうち回って」
エッちゃんって……夢で見たよりヤバイ人なのかもしれない。
「さぁさぁ、お風呂に入って着替えましょう? 悪夢にうなされすぎていろいろ出てしまっていますから」
「!」
エッちゃんさんはよく見ると、私とはちょっと違う顔をしていた。なんていうか背も高いし、私が成長したらあんな感じなのかなってかんじ。手首から先しか見えてないけど、腕は金属製ではないみたいだし。(と、現実を見て現実から目をそらす私であったとさ。)
あと、お風呂が近くにあったのでとても助かりましたとさ。(だって今の私が歩くと……床が汚れるから……。)
「すごく広いお風呂ですね」
「安心してください。汚した床は私が掃除しておきますから」
「……どうも」
「だから早く脱いで見せてください」
やっぱりヤバイ人だ。
「いい体してますね。体の何割かが金属製。自己修復ナノマシンを持っているのにそこまでの体になるなんて。エクエロい」
ハァハァするわけでもなく、淡々と言ってくるのが怖い。あとまばたきしてください。ガチのガン見やめてください。
「服と下着は私がもらっておきますね」
「洗ってください!」
「あ、家のお風呂は高性能なんで全部そのまま流しちゃっていいですからね」
はぁ、持って出てっちゃったけど……本当に洗ってくれるのだろうか。
「シャワー……たくさんある……」
プールみたい……。すご。とりあえず体を流して……。(流石にそのまま入るわけにはいかない。うう……なんか流してると罪悪感がすごい……。)
「はぁああああああ、きもちいい」
お湯加減最高! 手足を伸ばして入れるお風呂最高!
「泳ぎたいけど泳ぐな私」
私に言い聞かせる私。うん、それにしても気持ちいい!
「あらぁ! ソドム-Y、おもらしはちゃんと洗い流してから入ったんですぅ?」
「ら、ラヴちゃん! ちゃ、ちゃんと洗い流しましたよ! ちゃんと!」
「石鹸で洗いましたぁ?」
「う……え?」
湯煙の向こうから現れたラヴちゃんの体は……。
「何驚いてるんですかぁ? あなたの体も似たようなものじゃないですかぁ」
「それって……」
「研究のためですぅ! 自分の体で試さないとわからないこと、たくさんあるじゃないですかぁ」
機械がいろいろついているくらいでは、私はもう驚かない。でも、ラヴちゃんのお腹は……半分くらいあきらかに腐っていた。
「ゾンビ化への対抗手段を持っていないとぉ、ラヴクラインなんてやってけませんからぁ」
「どんな……感じなんですかゾンビになるって……」
聞いてはいけない気がしたけど、聞いておかないと後悔する気もした。(聞いたら後悔する気もしたけど。)




