58:ロックンロールローラー
デモ隊とかいうのは、クリティカル・ジョニーさんが一声かけると帰って行った。途中で突っ込んできた集団も一緒に。
「えっと、ジョニーさんだっけ。なんなのこれ」
「ロックンロール行為さ! 非暴力を叫ぶ者たち、暴力しか信じれないバッドボーイたち! そのぶつかりあいはエイトビート!」
「は?」
ぶん殴りたい。私のハートがそう叫ぶ。うん、むしろ私のほうがロックンロールなんじゃないかな。
「自作自演ってことでいいのかな」
「かー! 厳しいねUは! そんな細かいこと気にしてちゃダメさ」
「ねぇ、メメメス。これ、メメメスの曲作ってくれた人かなんか知らないけどさ、殴るよ?」
「ああ、構わねぇ」
メメメスとこの馬鹿は、通信上でやりとりをしてあの曲を作り上げたらしい。まさかこんなところで合うなんてミラクル偶然ミラクル! はぁ、なんだか私のテンションもおかしくなってきたよ。
「じゃあ、トーナメントで会えるのを楽しみにしてるよベイベー」
「は?」
ねぇ、なんで帰るの?
「っていうか、あいつも出場者なんだな。なんだったんだ」
流石にメメメスもポカーンだよね! ポカーンだよね!
「俺はロックンロールローラー! クリティカル・ジョニー!」
いや、よくわかんないポーズで振り向くなし。そのまま帰れし。
「ちょっとかっこいいな……」
「メメメス、マジで言ってる?」
「リドルゴほどじゃねぇけど」
そう言ってメメメスは、私に背を向ける。
「ああああああああああああああ!」
「うわっ! びっくりした! どうしたソドム」
いや、特に理由はないんだけど、なんか叫びたくて。もうなんだか、なんだかもう!
「なんてシャウトだ! 心にならない叫び、それがUのハートのバーニングかい?」
「うるさい!」
抑えられない。抑えられない、戦いたい! というか殴りたい!
「おい! ソドムやめろ!」
「別に今倒しても同じでしょ! どうせ戦うんだから!」
「そう、どうせ戦う。Uと俺は」
「がっ」
あ、れ……。強い?
「Uはなかなかの修羅場を通ってきたみたいだね。致命傷をさけるためにわざと怪我をすることをチョイスするなんて」
「…………」
「なるほど自己修復……ロックンロールだ! 楽しみだよ、Uとファイトするのが!」
「待て!」
う……確かに去り際はちょっとかっこいい。爆音のバイクで現れた金髪美女、そして美女が後ろにずれて運転席にジョニーが飛び乗りブロロロロロ! はぁ、なんだこれ……。(バイクなんてはじめて見たよ……。)
「ソドム、おまえもうちょっと落ち着けよ」
「うん、ごめんねメメメス」
「まぁ、かっこいいから余計にムカついちゃう気持ちはわかるけどよ」
ごめんメメメス、私その気持ちわかんない。




