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ソドム・パラノイア  作者: Y
HELL CAN WAIT
59/301

54:リングで殴れ

 私のテストマッチの相手は、背の高い人だった。誰もいない観客席に囲まれた私達の間に、会話はない。


『10・9・8……』


 巨大なモニターに表示されるカウントダウン。会場はとても広いのにリングのサイズは……私が今まで戦ってきた会場よりだいぶ小さい。ここで上手く戦うためには…………。


『3・2・1 START』


 一歩踏み込めば相手の顔に手が届く!


「!」


 しまった、リーチが違いすぎる。


「なっ!」


 ニヤけた顔で、私の服を引きちぎる。(博士がくれたアリス服ではない。だがラヴさんが、それを模して用意したものだからちょっと苛立ちはあった。でも冷静さもある。)


「はぁ」


 くだらない相手だ。殴れるチャンスを捨てて服を破って辱めて、戦意を喪失させようってことだよね……。見たければ見ればいい、私の体はヘヴィメタルだ。


「うわっ!」


 と、かっこつけたせいか、私は破れた服に足をとられすっ転ぶ。


「ぎゃふ!」


 そして顔面に膝をいただく。痛い。


「はぁ、もう!」


 服を破り捨て(破れてたけど。)私は()()()()()から下着姿に変わる。はぁ、戦いに集中できない……なんか余計なこと考えちゃうな。別に相手もそんなに弱いわけじゃないんだけど――――。


「痛っ! 痛っ!」


 長い手を鞭みたいにしならせて、ペチペチと殴ってくる鬱陶しさ。近づけば距離をとられてまた殴られる。


「…………」


 でもなんか、なんかなぁ。


「…………」


 でもなんか、なんかなぁ。


「…………」


 でもなんか、なんかなぁ。


「ねぇ、あなた本当に私に勝つつもりなんだよね?」


 そう、あなたは全然怖くない。


「ねぇ、スポーツでもやってるつもり?」


 踏み込めば殴られる。なら姿勢を低くして打たれる面積を減らせばいい。殴られながら、あと一歩大きく踏み込めばいい。


「もう逃げれないよね」


 気がつけば背中にロープ。もちろん私の背中じゃなくて相手の背中に。リングって結構便利かもしれない。


「加減、しとくよ」


 深く突き刺すような、金属の拳。私の綺麗な金色が、お腹に突き刺さったせいで吹き出す()()。うえ、試合前にこんなもの食べないでよ……。


『WINNER ソドム-Y』


 ああ、そっか。私はソドム-Yなんだよね。というわけで、私のテストマッチは()()です。



 

 そして翌日、メメメスも勝った。なんの苦戦もせず。やっぱり、強いんだねメメメスは。(その様子を私はラヴちゃんとモニターで見ている。メメメスも私の試合を見ていたのだろうか?)


「二人とも嫌な経験しているだけあって強いですぅ」

「ありがと、ラヴさん」

「ラヴちゃんって呼んでくださいよぉ」

「うん、ラヴちゃん」


 戦うことは、今の私にいろいろな意味で必要なのかもしれない。()()()()()()()についても「ああ、この人は私に危害を加えたことは一度もない。むしろ絶望していた私に道を示してくれている人なんだ」ってちゃんと思えたから。


「ソドム-Yはいい目をしてますねぇ。大事な人を失いそうな焦りでしょうかぁ? あ、メメメスは大事な人を失っちゃったんでしたっけ?」

「いい加減にしてよラヴちゃん。わざと煽ってるよね? あとそれ、メメメスの前では絶対に言わないでね」

「仕方ないですねぇ、いいですよぉ」


 やっぱり好きになれないな、この人のことは。

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