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ソドム・パラノイア  作者: Y
HELL CAN WAIT
58/301

53:一人、二人。

 私とメメメスに与えられた一室には、ベッドが一つだけ。


「ラヴさん変な人だね」

「おいソドム、おまえよく()()()()()()()()……いや、すまねぇ」


 メメメスはやっぱり優しい子だ。私よりずっと。


「同じベッドでいいか?」

「うん。私は別に」


 私達はまだベッドに入っていない。渡されたコンピュータで、タッグマッチのルールを確認しているから。(私はコンピュータの操作は苦手だから、メメメスにお任せだけど。)


愛を込めて金を(ラブ・ユー・)放り投げる一分間(マネー・タイム)とかないんだな」

「うん、純粋な力比べって感じだね」


 この街の暴力的地下遊戯アンダーバイオレントゲェムはタッグマッチしか存在しない。私達の街では暴力的地下遊戯アンダーバイオレントゲェムとタッグマッチは別物だったから、ちょっと変な感じ。

 ルールはシンプル。リングに上がれるのは一人で交代するときは手をタッチ。どっちか一人が戦闘不能になったら負け。つまり二人同時に戦うのは、反則。なんかこのルールなら、二人でやらせる意味……ない気がするけど……。


「で、その前にテストマッチがあるわけだな」

「うん、私は明日だね」

「私は明後日だぜ」


 参加資格を得るためには、テストマッチと呼ばれる戦いに勝たなければならない。それはなぜか一人で戦う。でも登録はペア。つまり、私が負けてもメメメスが負けてもダメだということ。


「かならず勝つぜ」

「うん、必ず」


 私達はこの街でSリーグを目指す。だから絶対に負けられない。負けたらすべての意味を失うから。


「正直明日はあいつ……ラヴさ……ん……には会いたくねぇな。あの人の話聞いてると頭おかしくなりそうでよ……」

「話聞かなければ良いんだよ」

「そ、そっか」


 その時私の心によぎったのは「メメメス負けないで」という()()。それはあの日の狂姫(きょうき)さんに向けたものとは全く違う、もっと()()()()()()()()()


 それからしばらくして私達は布団に入る。一つしかないベッドの、ひとつしかない布団に。


「なぁ、ソドム。くっついていいか?」

「いいよ」

 

 正直、体温が鬱陶しかった。でもメメメスを支えれられることは嬉しかった。


「チッ情けねぇな。私は自分の意志で来てるんだぜ……しっかりしろよメメメス」


 今のメメメスのつぶやきは自問自答なのだろうか?(私の耳に入っているから、自問自答ではないかもしれない。)


「おい、どうしたソドム」


 あれ、私……泣いてる? なんで?


「まぁ私も泣きそうだけどな」


 それから私達はたくさん泣いた。大きな声を出して、頭を使わず馬鹿みたいに、お互いをきつく抱きしめて。


「おまえの腕、冷たくて気持ちがいいな」

「うん、足もだよ?」


 きっと私達の泣き声は、ドアの外まで聞こえていたはず。もしかしたら窓の外までも。(それを恥ずかしいとは思わない。つまりこの街は私にとって、ただの他人だということ。)


 

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