diary「これは弱音ではない。言い聞かせてるんだ。」
嘔吐した便器の中を覗くとそこに私の顔は写っていなかった。当然だ、吐瀉物が水面を隠してしまったのだから。
「ソドム、本当にやるのかね?」
「うん、だって私はAリーグチャンピオンだし」
「発表された時おまえはチャンピオンではなかっただろう」
「私がいかなきゃ。そのために開催まで時間をあけたんでしょ、スカーレットは」
スカーレット。あなたがこの街に敵として戻ってくるだなんてね。敵として出ていったこの街に。(それは私へのメッセージ?)
「全く、おまえは勝手だ」
「ごめんなさい。でも――――」
「好きにするがいい。私はどうせもうダメだ」
ラヴクラインは自覚している、自分のゾンビ化がはじまったことを。(つまり彼女はもう戦いというステージから降りたのだ。)
「最後に聞かせてくれ、おまえの動機はなんだ?」
「愛ですわ」
「なんだそのふざけた喋り方は」
「新しい私ですのよ? わたくしは多分、私でいたら壊れてしまいますもの」
ああ、スカーレット。私はあなたに勝てるだろうか。あなたをこの手で殺すことができるだろうか。ふふ、はは、あはは。最高の気分だ。私の中に黒い狂気が渦巻いている。
嗚呼。
嗚呼。
意図的に狂おうとすることってこんなに難しいことなんですの?
嗚呼!
そうだ、そうですわ! わたくし、これから黒き狂気兇器強姫と名乗りますわ。どうかしらスカーレット、あなたを殺すほど愛した私にぴったりの名前でしょう?
ああ、この喋り方、喋りにくい。




