50:heaven can wait
こんにちは、ソドムです。あれから私は為す術もなく、腐敗のはじまった博士と過ごしています。でも博士はまだ、人間です。だって動けない博士にお薬を注射してあげようとしたら、コード404が出て刺すことができなかったので。
「すまんなソドム」
「うひひ、いいよ」
この家にカメラはもう、一台しかありません。(博士があの日、私にくれたカメラだけがこの家にあります。)私を治すためにお金が凄くかかったから。博士は言いました「このカメラはおまえのだ、だから勝手に売ったりはせんよ」って。その言葉を聞いて私の中には、罪悪感がたくさん。だって私、あれ以来あのカメラを使ってなかったから。でも、それは言いません。博士を疲れさせたくないから。
「博士、寝ちゃった? うひひ、私行ってくるね」
博士は睡眠時間がとてもとても伸びています。きっと次起きるのは、一日か二日か三日くらい後。
「待ってましたよぉ、ソドム-Y」
私を待っていたのは、赤茶色の髪で眼鏡をかけた白衣の人と、メメメスと、航空機。(乗るのも、こんな近くで見るのも初めてだけど感動はない。)
「やっぱりあのソドムはこないんですかぁ?」
「狂姫さんは博士を守ってくれるから」
「あらあらあらぁ、そうですかぁ。まぁいいですぅ、どうせ私の街でSリーグに上がれるのは二人ですしぃ。あんな出がらしのソドムよりあなたのほうがいいですからねぇ。ね、ソドム-Y」
この博士とそっくりな顔で話すこの人を、私は博士と呼ぶことはない。だからちょうどよく感じる、勝手につけられた「Y」が。
あなたなんかに私の名前を呼ばれたくない、でも私はソドムだから、あなたなんかに名前をつけられたくない。だからYがちょうどいい。そう思わない? ね、博士。博士。博士。




