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ソドム・パラノイア  作者: Y
heaven can wait
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4:暴力的地下遊戯

 私の試合は()()()だった。リドルゴさんが大きな手で私の背中を叩き「負けるなよ」と言ってくれる。相手より私が先に呼ばれたってことは……今日戦うのは()()の可能性もあるのかな。というか、もう少し早く発表してほしかった。そうしてくれれば、廊下を走りながらリボンを結ぶなんて面倒なことしなくて済んだのに。


「モニターの向こうのレッディィィィィィスアンジェントゥメン! さあさあ、今日もはじまったはじまった暴力の祭典っっ! 暴力的地下遊戯アンダーバイオレントゲェムへようこそっっっっっっ! 暴力的な暴力の祭典だぜぇ!」


 廊下の向こうから聞こえてくるのは、試合を盛り上げる実況者の(騒がしい)声。このあんまり上手じゃない感じ、前回の人と一緒かな。それにしても、あんなに叫んで喉を痛めてしまわないのでしょうか?


「さて、第一試合っっ! これからブルゥウウゲートから登場するのはゴモラシティのマッド・サイエンティストッ、ドクター・ラヴクライン・ステインスの秘蔵っ子、拳の国のアリスっっっ――――」

 

 アリスって言われるのは博士の狙い通り。人気者になることも大事だからって、私の衣装をまるで不思議の国のアリスかのような水色のエプロンドレスにしてくれたんだから。でも拳の国って本当に酷い言い方、たしかに私のデビュー戦は、全体重を乗せた派手なパンチで勝ったけど……。


「さぁて登場するぞ! いくぜみんな! 今から愛を込めて金を(ラブ・ユー・)放り投げる一分間(マネー・タイム)がはじまるぜぇ! 紹介しよう! 拳の国のアリス! 片腕のっ……か、片腕じゃないぞ! 片腕暴力アリスが片腕じゃないぞっ!」


 誰もいない観客席に囲まれた、灰色でなにもない広い空間に飛び込んだ私は、両手を高々と上げる。今はとても大事な時間、私のことを良いと思ってくれたこの試合を見ている人間たちが、各自自由に私宛にお金を送ってくれる大事な大事な一分間(稼ぎ時)


「両腕だ! 片腕アリスが両腕になったぞ! よぉし改めて紹介しようっ! ゴモラシティのマッド・サイエンティスト、ドクター・ラブクライン・ステインスの秘蔵っ子! 片腕の国のアリス改めっ! 拳の国のアリスっっソドムだぁああああああ!」


 えっと、私今日まで拳の国のアリスって呼ばれてたんだけど……適当だなぁ。でも私はそんなことは顔に出さず、新しくつけてもらった右腕をグルンと回してあちこちに取りつけられているカメラにアピールする。


「¥500-っ! ¥900-! おおっとここで¥1,000-が来たぞ!」


 高い位置につけられたモニターに表示されているのは、今私が()()()()()()()()()金額。う……前回より安い、それに数が少ない! 少なすぎるよ! うう、なんでだろう。


『腕が片方のほうが可愛かった、ソドムちゃんのファンやめます』


 ()1()0(),()0()0()0()-()()()()()()()()()()()()()()()()メッセージがモニターに表示されたのは、制限時間一分が終わるギリギリのタイミング。


「合計額はっ――――いちまぁあああんよんせぇええええんはっぴゃくえんだぁあああああああ!」


 そんな盛り上げなくても……。私はぼんやりと……でかでかと映し出された『¥14,800-』という結果を眺めていた。

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