46:浄罪界のスカーレット
浄罪界のスカーレットは、もう怖いレベルで周りを燃やすことはできなくなった。狂姫さんがすごくがんばったから。本当に、本当にがんばったから。
「すごい……」
「すすすすごいっすね……」
私達の戦いは、一足先に終わった。途中からセカンドステージも、意識して使えるようになってたし。(博士を無傷で守りきれたのはそのおかげ。)
「この街には優秀な選手が揃っているからな、ハンターなどには負けんよ」
「博士、大丈夫?」
「ああ、おまえが盾になってくれたおかげで一つの傷もない。だが少々疲れたのでね、座らせてもらうよ。メメメスおまえも休め、クロックアップはもういいだろう」
「そそそうっすね、めめめ目がいい痛いっすすす」
そう言って笑うメメメスは、とてもいい子なんだと思う。
「はぁ、な、ななんか頭がクラクラするっす。そ、それにしても狂姫さん強いっすね。相手も化物っすけど……」
「ああ、狂姫はSリーグ戦に特化した選手だからな」
「狂姫さん、試合でみるよりずっと……」
自分の体と同じ大きさくらいの炎しか出せなくなったスカーレットに、狂姫さんは何箇所か傷を負わせることに成功している。
「狂姫さん、戦士って感じでかっこいいぜ。間違いねぇ、あの人なら、スカーレットをぶっ殺してくれる……!」
朝日が狂姫さんと剣を照らす。私の腕と同じ色の剣が、スカーレットの喉に突き刺さる瞬間を――――。
「あ! 剣が!」
スカーレットの炎が目もくらむような輝きを見せて、剣が……溶かされた。スカーレットの喉を貫く前に。
「そんな……」
「いや、悪くない。あれでナノマシンを全て消費させたはずだ。作戦通りだな」
「え?」
「ああ、あの炎さえ攻略すれば純粋な肉弾戦。そうなれば狂姫の分野だ」
スカーレットは狂姫さんに殺されないために、残る全てのナノマシンを使って剣を溶かした――! つまり、もう炎は……!
「狂姫さん! がんばれ!」
心の中で「勝って」と願う。すごく、すごくそう思う。そしてその時、私には聞こえた気がした。狂姫さんが「ありがとう」と言った声が。
「え、え……え……」
「ソドム、落ち着け! メメメス、私が合図したらあれを拾え! いいか、今は動くな」
「はいっす!」
なんで、なんで、なんで。あれって、あれって……狂姫さんの……。
「ソドム、時間がない。意味がわからんと思うが私の言うとおりにしろ。スカーレットが私達を狙う前に!」
「は、はい」
「見ての通り狂姫は負けた。さすがにあの傷は回復できない。だから今度はおまえが戦うんだソドム」
わ、私が……狂姫さんを倒しちゃった人と……?
「私を信じろ、おまえならサードステージに入っても帰ってこれる。私がそうした、だから信じて私の血を飲め」
「血……?」
「そうだ、私が良いと言うまで飲め。私の血はおまえのサードステージの起動コード、それに404のキャンセルコードだ」
博士? どうして手首を切って……。あ、だめだよ、血が出てるよ。
「しっかりしろ。おまえはこれから地獄を見る」
「うん……」
「それでも、私達を守ってくれ」
「うん……」
そうだ、今は――――。




