45:火だまり
Sリーグ選手、浄罪界のスカーレット。その強さは私が思っていた以上に絶望的だった。(映像で見ていたより酷く見えるのは事実なのか、それとも私の心が怯えているせいか。)
「…………」
「あれが散布するナノマシンはひとつひとつが小さな太陽のようなものだ。木で作った家など、一瞬で崩れ去る」
「博士……狂姫さんは……」
「あの近くで距離を保ちつつうろうろしているはずだ。ナノマシンを消費させるためにな」
そうしている間に、街の一角が煤と火だまりだけになった。
「さて、私達の仕事をしよう。メメメス、やつらはどうだ?」
「ままま真ん中のひひ一人、みみ右からささニ番目、あといい一番ひ左のやややつつがが人間っぽいっすす」
「上手くしゃべれないことも、正解かどうかも、どちらも気にするな。とにかくおまえはできるだけ早く人間っぽいやつを私に教えればいい」
メメメスの目、左右別々に動いてる。すごく速く……。
「ソドム、すまないが銃を持っているやつがいる。撃ってきたら盾になってくれ」
「うん」
敵は五人、まだ距離がある。
「よしっ! うひひ、見た博士? 私、弾をパンチしたよ!」
「いいぞソドム、それが正解だ。その腕は弾ぐらいでは傷すらつかん。いいか、できるだけ体に当てるな、狂姫の作戦上、長期戦になるかもしれん」
私の役目は博士を守ること。そしてメメメスの役目は敵を見分けて、倒せる敵を倒すこと。そして博士は、コード404が出てしまう相手を撃つこと。
「ああ、やはり同じショットならカメラのほうが好きだな」
すごい三発三中! 博士はほんと銃の名人だ。
「来るぞ」
「うん!」
向かってきたのは、博士が撃たなかった二人!
「すごいよメメメス!」
「ああああありがとな」
私の出番はなし、さすがメメメス。でも気を緩めたらだめだ、もう次が来てるから。
「つつつつぎははたたたぶぶん人間じゃないっっっす」
「そうか、弾は温存したい。二人共奮闘してくれ」
それからたくさん戦って、私は何箇所か怪我をして治った。でも、正直苦戦とは言えない。(楽勝ではないけど、私達は多分負けない。)
それは相手が弱いから? いや、全然違う。
人間判定を通っている相手をメメメスが見分けて、人間である博士が倒す。人間判定を通ってない相手は私達が倒す。そして戦いながら、私が博士を守る。そうやって、それぞれができることをがんばって精一杯やって、がんばって力を合わせてがんばっているからだ。街が炎に変えられていく景色を、瞳に映しながら。
「狂姫さん、がんばって……」
私達よりもがんばっている人へ――――。




