41:Sリーグ
博士から聞いたSリーグの正体は、私の思っていたものと全く違うものだった。Aリーグで勝利を積み上げ、一定数のポイントをためた強者が、Sリーグ選手となる。そしてSリーグとは、Sリーグ選手がゴモラシティに襲来、Aリーグチャンピオンが迎え撃つことである。
「ゴモラシティってたくさんあるんだね」
「ああ、そうだな。まぁ私はここしか知らんが」
「狂姫さんは……」
「ゴモラシティを囲う、人間判定を通った者以外に反応する高性能な対生命体地雷。そこを抜けるためにあいつは黒くなることを選んだのだよ。まぁ、あいつの話なのでね、どこまでが本当かわからんがスカーレットを殺すためにああなったのは事実だろう」
だから……。
「博士は、どうしてナノマシンを私の体に」
「狂姫は私と会った時、もう壊れかけていた。修復用ナノマシンはあくまで修復用。無限再生ではないのでね」
「…………」
「だから私は、できる限り治療と改修をしてやった。その礼として私の大切なものを守るためのナノマシンの開発に協力してもらったのだよ」
狂姫さんは今まで、一体どんな生き方をしてきたのだろう。
「元、男だって話は……」
「あれはあいつのでっちあげだ。そういう目立ち方をしておくことで、万が一にも外から来たなどという噂がたたんようにな」
「ね、ねぇ博士……私のナノマシンを狂姫さんにわけてあげれば……」
「それは無理だ。あいつは今のナノマシンが適合しすぎている。新しいものを受け入れる余裕はない」
なんだろう、この胸のざわめきは。
「じゃあ、私が協力して戦えば」
「それも無理だ。Sリーグ選手には人間判定を通った者と同等の権利が与えられる。人間が作った工業製品の名を口にし、コード404による防衛が可能だ」
「まさか」
「そうだ。AリーグチャンピオンにはSリーグ開催時に限りコード404のキャンセルコードが渡される」
つまり、あのスカーレットとかいう人と戦えるのは狂姫さんだけ?
「404を……なんとか……」
「Aリーグチャンピオンのキャンセルコードは試合直前に渡され、二日程度しかもたんそうだ。その間に解析など不可能だよ」
「ごめんなさい」
「謝るな、誰だってそう思う」
「うん」
「狂姫がその期限内に倒せなければ、この街はスカーレットの気分次第――――」
そこで生き残るために、博士は私にナノマシンを……。
「――――だが、一度Sリーグの開催地となったゴモラシティはもう二度と会場にはならない。いいか、生き残れソドム」
博士は狂姫さんが負けると思っているのかな……。
「ああ、驚かせてしまったな。安心しろ狂姫は勝つだろう。だが、その戦闘は凄まじいものになる。おまえはその間生き残り、最後の戦いに勝利した狂姫を友人として迎えてやれ。もちろん、私を守ってだ」
「う、うん!」
「頼むぞソドム」
博士の目は、まっすぐに私を見ていた。私はこの時、博士の目をまっすぐ見れていただろうか?




