40:理由(Reason)
私のセカンドステージの力は、狂姫さんのセカンドステージより強い。私のサードステージはその力を引き出した結果生まれた、手を出してはいけない領域。
「え、Sリーグ?」
「ああ、Sリーグだ」
Sリーグって……確かゴモラシティの住人は見れない暴力的地下遊戯の頂点……。
「私がSリーグに出れる日が来ることを考えて、このナノマシンを作ってくれたってこと?」
「すまないが違う。Sリーグが開催された時、生き残るためだ」
「え?」
その時、突然会場のモニターがついた。(それは本当に、突然だった。)
『紳士淑女の諸君ごきげんよう、ゴモラ67の皆様に素晴らしいお知らせですぅ! あなたがたの街、67番目のゴモラがなんとSリーグの開催場所に選ばれましたぁ!』
砂嵐、映像はなにもない。でもなんだろうこの声……怖い。
「ほら、やっぱりここでしたわ。わたくしの予測どおりですわねラヴクライン」
「ああ、そうだな。さすがSリーグ狩りの狂姫だ」
「今日までわたくしが何人のSリーグ選手を殺してきたと思ってるんですの?」
えっと……。
『開催は三日後我らがSリーグ選手をお相手いただくのはぁ、あなたがたの街のAリーグチャンピオンですぅ!』
Aリーグチャンピオン……それって、狂姫さんだよね。
『そして……あなたがたにお届けする素晴らしき厄災、Sリーグ選手は――――』
何、今の音。狂姫……さん?
「ようやく会えましたわね、恋い焦がれましたわ」
モニターに映る、赤い髪、赤い瞳の女性。
『ゴモラ23出身、同地を焼き尽くした浄罪界のスカーレットですぅ! どうやらこの街のチャンピオンは一方的な因縁を抱いている様子、とてもおもしろいバトルになりそうですねぇ。それでは、また、ごきげんよう』
ばきん、ばきん、ばきん、ばきん。狂姫さんが奥歯を噛んでいる。あんなに音出したら、歯が壊れちゃうよ。(もしかして再生し続ける歯を噛み砕いているのだろうか。)
「ソドム、今は一人にしてやろう。帰るぞ」
「う……うん」
狂姫さんは、もう消えてしまったモニターをずっと、ずっと見つめていた――――見開いた、黒い瞳で。




