表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソドム・パラノイア  作者: Y
heaven can wait
4/301

3:ゴモラシティ

 ()()()の日が近くなると、博士はソワソワしだす。どんなカメラが売りに出されるかが気になって、ソワソワしちゃうから。


「資金が足りないと困るな。すまないが、その右手の試験も兼ねて――――」

「うん! やるやる!」


 私といえば、超々ご機嫌! 博士が右腕をつけてくれたからね! 博士がくれた右腕、博士がくれた左腕。二つはとてもそっくりだけど、鏡に写したみたいに指の順番が違う。うひひ、これ本当に右腕だ!


「うひひ」

「おまえは本当に嬉しい時はすぐわかる」

「え? なんで?」

「変な笑い方をするからだ」


 変じゃないよ! と言い返そうか悩んだけど、博士がなんだか嬉しそうだったのでそれはやめ。


「そうだ、わかっていると思うが殺害同意ボタンだけは押すなよ」

「うん、わかってるよ。ありがとう」


 博士がくれた右腕は、まるでずっとあった右手かのように自由に動かすことができた。




 その日の晩、私の()()()()が決まった。試合は三日後、それまでに右腕と私のリンク精度をあげると言って、博士は私の体をいじりはじめてくれた。


「今回は対戦相手が直前までわからん。ヤバイと思ったら棄権しろ」

「お金は良いの?」

「お前が壊されるほうが私にとっては、よほどマイナスだと思わないかね?」


 接続部に突っ込まれた検査器具からピリピリと身体の中に電気が流れるのは、痛いような気持ち良いような感じで――わりと嫌いじゃない。私は「電流が私に命を与えていく」という妄想(イメージ)をしながら、右手の指先を静かに伸ばす。


「でも棄権すると人気が……」

「金も人気も大事だが、その集め方はもっと大事だ」


 博士は作業の手を止め、私の頭を優しく撫でてくれた。




 それから三回目の夜がきて、私と博士はゴモラシティ(この街)の中心部にある闘技場へと向かう。


「今日は静かだね」

「ああ、今日はクローン観客席のある試合は一つもないらしい」

「強い人のエントリーがないんだね」

「お前だって強いさ。人間よりかはね」


 控室に向かうためのI()D()()()()()()()()()()()、博士とは一旦ここでお別れだ。


「無理して勝たなくても良い。壊れない程度にやれ」

「うん、わかったよ」


 私達がお金を得る手段は、()()で戦うか、博士が時折頼まれるいろいろなものの修理だけ。博士は結構稼いでいるから私の稼ぎなんてあんまり役に立ってなさそうなんだけど……私達の街は()()()()いるから、()からお金を得るほうが相対的に見ると効率がいいと博士は私を褒めてくれる。(正直そのへんの話は難しくてよくわからないから、何を褒められているのかわからないのだけど。)


「ソドムちゃんじゃないか」

「リドルゴさん!」


 控室には、近所でパン屋さんをやっているリドルゴさんがいた。いつ見ても太い腕、掴まれたら逃げられなそう。


「おや、それは新しい腕かい?」

「うん!」

「片腕でもあれだけ強かったのに、どうなっちまうんだ?」


 リドルゴさんが大声で笑うと、他の人達もみんな私の方を見た。こんなに見られちゃうと、ちょっと緊張するな。(本当は全員一列に並ばせて、マジマジと右腕を見せつけたい。)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ