38:ネタバレは全裸でよろしく
つまり狂姫さんは私にこんなことをやれと……! 無理無理無理! 気が狂いそうなほどの痛みを痛みで上書きし、正気を保つなんて、正気じゃないよ!
「ちょっとソドム、その微妙な顔はどういうことですの?」
「えっと……」
「これは旧型のナノマシンだからぎりぎり成り立つ方法なのですわ。新型のあなたがそんなことをしたら……」
「したら……」
ぎりぎり成り立つの意味もよくわかんないですけど……。
「死ぬ」
「そうですか」
「だから絶対、ここを目指してはだめですわよ。それに新型のサードステージは精神汚染を伴う。危険すぎますわ」
気が狂いそうな痛みと精神汚染の境界線ってなんだろうか。
「まったくあなたは馬鹿ですわね」
「え、この話についていけるほうがおかしいとおもうんですが。というか狂姫さん、痛いんですよね……今も」
「痛みなんて我慢すればいいだけじゃありませんこと? 痛いくらいで文句言う方がありえないですわ」
ありえるよ!
「サードステージ。通称黒死病。身体組織の部分黒化、わたくしの場合は髪と瞳ですわね、それとともに圧倒的な治癒力と戦闘力を誇る」
「はぁ」
「ただあなたに搭載された新型は、その効力が強すぎて――――」
「強すぎて」
「最終的に痛みがなくなりますわ!」
なにそれ最強なんですけど! いや、そこまでがすごく痛いのだろうけど。
「だからだめなのですわ」
「え、本格的に意味がわからないんですけど」
「痛みは生存の証。痛みを失った時、うーん、なんて説明したらいいかな」
え、いいかなじゃないよ。急に緩くならないで下さい! あと服、そろそろ着てくれませんか?
「簡単に言うならあれですわ。戦闘狂。もうなんか戦いを求め続けるだけの馬鹿になるってことですわ、永遠に壊れるまで」
「あ、はい。わりとよくわかりました」
「つまりあなたはセカンドステージまでしか使えない」
うーん、納得できるようなできないような……あ!
「あの狂姫さん、そのペストとかいうのどうやって発動させるんです? 絶対簡単じゃないですよね?」
「ええ、あなたには発動させることも無理だと思いますわ」
じゃあなんなのだろう、この話。
「狂姫さん、そろそろ本当のこと教えて下さい。なんか、大事なこと隠してますよね?」
「はぁ、全く勘の良い子ですわね」
いや、誰だってそう思うと思うんですけど。
「本当はこういうネタバレはよくないのですけど」
「いや、あの、ネタバレはすでにしてる気がしますが……」
「まぁそうですわね。それにネタバレせず、どたんばでかっこよく能力開花なんてほど私達はヒロイックじゃないですし――」
「ぐえっ!」
え? なんでこの人今私のことぶっとばしたの? 全裸で。




