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ソドム・パラノイア  作者: Y
グッバイ、ソドム
300/301

276:あなたはそれを地獄だと言うだろうか

 コヨーテのいる場所までは、鉄道で。ずっと続く線路、駅は一つもない。いや、あるのかもしれない。でもこの列車は止まらない。


「ああ、思い出すな」


 前、列車の中で戦ったな。あの時、痛かったのかな私は。

「…………」


 私は眠った。誰もいない列車の中で。でも、それは嘘。眠れなかったからずっと目を瞑っていただけ。


「そういうことか」


 もうどれくらい目を閉じていただろう。目を閉じていたから嗅覚が敏感になっていたのだろう。


「コヨーテ……」


 きっとこの列車の行き先には生者はいない。鼻をつく腐敗臭がそう教える。


『次は……バベルの麓……お、降りの…………555555733000:/YFは……さっさと降りて……』


 壊れたスピーカーがたどたどしく言う。だから私は、列車から飛び降りた。


「ああああああああああ!」


 空が飛べたら、良かったな。このゾンビの群れを突き抜けなくて済んだだろうから。




 ゾンビは私の敵ではない。強いて言うなら、崩れやすい障害物。


「はぁっ! はぁっ!」


 臭いには慣れた、感触にも慣れた。


「う……あああ!」


 今の人、コヨーテに似ていた気がする。でも()()()()()()()からだいぶ成長しているだろうし、見間違いかな。


「うあああ!」


 今のはリリールに似ていた。


「はぁっ! はぁっ!」


 今のピンクい髪のゾンビは――――いや、あれはきっと違う。


「!」


 なにか来る。向こう側からゾンビをぐちゃぐちゃにしながら。


「ダダドゥディエダガドダダディス!」

「あ……」


 覚えてる。あの顔……。


「あなたが、最後の壁だね」

「ンガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! グビュグギュグジュジュ」

「あはは! 頭おかしくなっちゃった? ちゃんと喋ってよ! 最後なんだからさ!」


 バベルの番犬、不死者クロリナ・クロリーナだっけ? どうでもいいや。私の邪魔をするなら!


「倒す!」

「ダドガヅゥダッダアアアアア!」


 派手な音がして、肩に痛みが走った。でもその痛みはすぐに消える、めり込んだ金属の腕を押し戻しながら。


「ダダドゥディエダガドダダディス!」

「クロリナ、こんな弱かったっけ?」


 圧勝…………というわけでもない。もしかすると私のほうが弱いかもしれない。でも、私は勝てる気がした。全力でぶつかれば、クロリナを倒しきれる気がした。


「私はっ……ソドムだっ!」


 どうして私は、自分の名前を叫んだのだろう。きっとその答えは一生わからない。

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