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ソドム・パラノイア  作者: Y
グッバイ、ソドム
299/301

275:乾いたメリークリスマス

 私は写真を手渡してもらった。また(知らぬ間に)いつの間にか私の手元からなくなっていた、博士の写真を。(今度はどこでなくしたんだっけ?)もうなくさないようにしよう。これは、博士と私のつながりなんだから。


「コヨーテのところに行ってくるね」

「全部、思い出したのですわね」

「うん。コヨーテがバベル派なら、伝えたいんだ。私がバベルを崩しに行くって」

「あなたらしいですわ。まぁでも、それは正解ですわね。コヨーテは今、バベルの入り口の番人、つまりあなたは避けて通れない」


 そうなんだね。コヨーテ、久しぶりに私に会ったらどんな顔をするだろうか?


「恋、してたんですの?」

「うーん、してないと思うよ」


 思い返してもそんなことはない。じゃあ何故私は、コヨーテに会おうとしたのか。ああそっか、私は今、誰かに言い訳をしたいんだ。私の判断一つで世界がめちゃくちゃになるかもしれないから。つまり、言い訳さえできれば、相手は誰でもいいということか。


「まぁ、心配しなくていいですわ。むこうはあなたのことを覚えていない」

「そっか。なら戦うことになっちゃうね」

「ええ、気分は悪いでしょうけど」

「そっか」


 犠牲はつきもの。そういう言葉で片付けて良いのだろうか? 


「そういえば今日はクリスマスですわね」

「そうなんだ」

「メリークリスマス、ソドム。そしてハッピーバースデー」

「……?」


 私の誕生日ってクリスマスだっけ?


「じゃあ行くね狂姫(きょうき)さん」

「ええ、さようなら」

「うん、さようなら」


 別れの挨拶は「また会いましょう」ではない。それはなんとなく、わかっていた。


 


 道中、砂漠の風に吹かれながら己に問う。「殺すのは怖いこと?」だと。そして私は口に出して答える。


「殺してしまう自分でいることが怖いこと」

 

 あやふやで、意味のわからない答えを。きっと今私はこの世界の主役で、他の人は脇役だ。コヨーテは重要な役目を持った脇役。私に殺される役。そしてきっとこんな状況を作り出したのは、バベル。だってあまりにも意図的すぎるでしょう?


「殺さない選択を」


 そうだ、コヨーテを殺すのはやめよう。私は強いんだからそれくらいできるはず。無力化して、私の道からどいてもらう。だってさ、わざわざ気分悪くなる必要は()()()()でしょ?


「私は本当に世界を救うのかな」


 バベル派がいるということは、感情を失いたい人達がいるということ。ああ、ようやく理解した。やっぱり私はコヨーテに会いたいんじゃない、コヨーテから、何故感情を失いたいのか聞き出したいんだ。私には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から。

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