271:腹に鈍痛
なぜ、こんな目に合わないといけないのか。私は腹を何度も蹴飛ばされながら、ずっと考えていた。
「きゃはは、狂姫が連れてきたからどんなヤバイやつかと思ったら、大したことないのだ!」
「げほっ! ごほっ! うがっ」
「わたくしも同じこと思ってますわよ」
ちょっとまって欲しい。狂姫さんは(多分)私の仲間で、この私を蹴っ飛ばし続けているニカによく似たちっちゃい子は敵だよね?
「殺して良いのだ?」
「殺せるものなら、別に構いませんわ」
構うよ!
「ソドムだっけ? きゃはは、覚えやすい名前なのだ!」
着いてこいと言われたのが今朝。なんにもない砂漠の真ん中にあった、古びた建物についたのが夕方。で、そこの地下室で私はずっと蹴飛ばされている。蝋燭の灯りに照らされながら。
「ごほっ! ごぼっ! ごはっ!」
「ふむ、確かに全然壊れないのだ」
「再生が異常に早くなってるわね」
「これは、今のうちに殺しとかないとまずいのだ! バベルに仇なす存在になる予感がするのだ!」
ちょっ……ふざけないで!
「あ、あれ?」
「ぎゃああああああっ!」
あれっ? あれ、私今なにした?
「痛いのだああああ!」
「え……お肉?」
手の中に、私の金属の手のひらの中にはピンクの肉。
「このっ! 今まで力を隠していたのだな! 反則なのだ!」
「えっ! ちょっ、ちょっとまって!」
「ぎゃぷ!」
あれ、パンチ当たっちゃった。
「はぁ、ようやく本性あらわしましたわね」
「え、本性って私……うわっ!」
「ぐわっ! なんなのだ急に強くなって!」
あれ、私めっちゃ強い? でもなんだろう、自分が強いことに違和感が――――――――ない。




