268:両目の思い出
私の予感は的中。黒き狂気兇器強姫さんは、ニカのベッドの前に立っていた。
「あら、また会いましたわね」
「そ、その子私の友達なんです……」
「そ、ソドムかにゃ! 逃げるにゃ!」
「美しき友情ですわね」
ニカ、逃げろって言ってくれるの? 自分は縛られて動けないのに。
「あなたのお友達、両目がないんですわね。なんだかとても、懐かしいですわ」
「!」
「あら、ソドム。どうしてそんなにさがっちゃったのかしら? まるでワタクシに、両目を抉られるのが怖いみたい」
あれ、本当だ。私なんで後ろに……っていうか、今、名前……。
「この子はもらっていきますわね。いい兵隊になりそうですもの」
「待って!」
「なに? ワタクシとやり合うつもりですの?」
「そ、それは……」
「ワタクシとやり合うなら、また、世界の大事に関わる覚悟を決めてもらいますわよ?」
この人……私のことを知ってる?
「あの女は引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、おりたそうですわね。ようやく、ゆっくりカメラを楽しめるとか言って。全く、無責任ですわ」
「あ、あのっ」
あの女――って。
「あなたの選択肢は二つ。ここで、お友達を連れて行かれるのをただ見ているか、一緒についてくるか」
「だめだにゃ! ソドム、逃げるにゃ! 反バベルの言うことなんて聞いたら――ぎにゃっ!」
喉に一突き……。すごく加減してたけど、あんなに的確に声を出せなくするなんて……。
「どうするのかしら?」
「……行く」
「そう、なら部屋に戻ってカメラを回収してきなさい。ワタクシの写真を残されるのは困りますわ」
「他の人も撮ってる気がするけど……」
だって、すごく有名な敵なんだから……私だけが撮影してたなんて、あり得ないよね?
「ふふ、相変わらずひねてますわね。さ、とってらっしゃい」
「は、はい」
この時私は気がついた。反バベルとか、そういうことは別に私にとっては大したことじゃないんだって。




