267:ふと思い出すような一枚
戦いはまだ続いてる。だから、デジタルのほうを持ってこようと、一度部屋に戻った。(私はまだあの人を撮りたいのだろうか? それとも三枚失敗したであろうことが悔しいだけなのか。)
「あ」
ふと思い出す、家を出る時に持ってきた何枚かの写真のことを。メメメスさんの写真とか、なんか上手に撮れた空の写真とか。確か、カバンの背中側のポケットに。
「あった! これ……」
その中の一枚は、私が初めて撮った写真らしい。らしいってのは……覚えてないから。(アリスダウンでゾンビ化の記憶が消えた時に、一緒に巻き込まれちゃったんだろうって言ってたのは、誰だっけ?)
「博士」
写っているのはアミさん。背景はボケてるから細かいところはわからないけど、見たことない場所……のような……。
「あれ?」
私さっき、アミさんのこと博士って言った?
「うひひ」
思わず笑ってしまう。だって、写真の中のアミさんが本当に博士っぽかったから! 白衣に眼鏡。なんだかすっごく賢そう。でもあの人、カメラの話ばっかりしてるから……カメラ博士だね!
「あれ? お店でも白衣だったっけ?」
そんなことないよね? あれ? えっと、あれ?
「戦わなきゃ」
違う、私にそんな力はない。だから写真を撮る係なんでしょ?
「この写真、なんに使うんだろう」
黒き狂気兇器強姫さんの写真って、今まで見たことないな……。
「ええっ!」
ま、まさかあの人の写真を撮ったって凄いことなんじゃ? 私が撮った写真があれば、大物の黒き狂気兇器強姫さんの顔がみんなにわかって……。
「追い詰めやすくな……るのかな」
誰も勝てなかった。本当にトランプ兵達がトランプみたいにばらまかれるみたいに殺されるみたいに……。そんな強すぎる人の顔がわかったところで――――あ、殺されてるのは「みたいに」じゃないか。
「!」
大きな音がした。音的にちょっと離れた場所? また死体でも突っ込んできたのかな……あれ、今音がした方って……。
「ニカ!」
助けに――――と思ってやめる。だって、私が行ったところで……。
「でもっ!」
走り出せたのは、黒き狂気兇器強姫さんが、私を矢から守ってくれたことを思い出したから。友達ですって言えば、ニカだけは許してもらえるかもしれないし!




