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ソドム・パラノイア  作者: Y
HELL HATE HARDCORE
289/301

266:強者と弱者

 急いで急いで、急いで部屋に。こんなに急いでるのは、急ぎなさいって言われたから……かな。(私にそう言った兵隊さんは、戦いに行ってしまいました。)


「よしっ」


 レンズを取り替えてよしだなんて、私、なんだか……。


「どこから撮れば……」


 窓の外、被写体はすぐに見つかった。


「うわ、強っ」


 強すぎて引く。それが率直な感想。顔以外露出のない、真っ黒な服。髪も、瞳も、なんだかすごく真っ黒な女の人は、兵隊さんたちを次々に――――。


「嘘みたい」


 ぐちゃってなって、ぶしゃってなって、ばきっとなって。初めて見る()()()()()()()()()は、現実味がなかった。


「撮らなきゃ」


 残り枚数は……あと五枚。しまった、新しいフィルム持ってこればよかった。っていうか、最初からデジタルのほうで撮れば良かったんじゃないかな!


「よしっ!」


 一枚。今のはいい感じに撮れたはず。振り下ろされた剣を上手に躱して、顔に拳を叩き込んだ瞬間を激写! あと四枚……失敗できない。あれ? そもそもなんで写真なんて撮ってるんだろ――――。


「うわあっ!」


 窓を突き破って飛んできたのは、首がネジ曲がった死体。


「あら、撮影中だったんですわね。綺麗に撮ってくれたかしら?」

「あ…………」


 壊れた窓枠に、あの強い人。


「そのレンズじゃ、こんな近距離にピント合わないんじゃないかしら?」

「え? あ、あ、そうですね!」


 ああ、そうだ。この望遠レンズって近く撮れないんだっけ。……っていうか私……なんで今、この人にカメラ向けちゃったんだろ……。びっくりしすぎて頭回ってないのかな。


「ほどよい距離に離れてあげるから、しっかり撮っておくといいですわ。反バベルの大物、黒き狂気兇器強姫くろききょうききょうききょうきをね」

「くろき……ええっ! 聞いたことある! 知ってる!」


 ちょっとまって、なんで私そんなに盛り上がってるの?


「へぇ。知ってる。それはいつから?」

「だってあなた有名人だから。学校でも、他のところでもいろいろ」

「他って?」

「えっと……」


 その会話が中断されたのは、黒き狂気兇器強姫くろききょうききょうききょうきさんに向かって矢がたくさん放たれたから。そしてその矢が私に当たらなかったのは……。


「あ、ありがとうございます……」

「上手に撮るのよ?」


 体に刺さった矢を抜いて、敵との距離を一気に詰める。あ、違う違う、敵は黒き狂気兇器強姫くろききょうききょうききょうきさんのほうだよ。


「私を守ってくれたのかな。なんでだろ……カメラが好きとか……かな? あ、そんな事より撮らないと!」


 三枚続けて撮影。しまった、焦って撮りすぎた…………現像したら絶対、ピンぼけ……。


「ぁ…………」


 私は最後の一枚の被写体に、黒き狂気兇器強姫くろききょうききょうききょうきさんを選ばなかった。廊下を少し歩いて離れて――――ピントが合う距離まで離れて――――さっき窓を突き破ってきた、兵隊さんの写真を。


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