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ソドム・パラノイア  作者: Y
HELL HATE HARDCORE
287/301

264:ポートレート・ニカ

 あの後、私はベッドと小さなテーブルしかない部屋にいるように言われた。あ、一応トイレはついてるね。


「はぁ」


 一日目、シャワーを浴びたかった。


「はぁ」


 二日目、シャワーを浴びたかった。


「……」


 三日目、もういいかなシャワーは……なんて気分になった。いろいろ考えないといけないのに、ボーッとしてしまって、運んできてもらうご飯を食べる以外は別になにも……ああ、あと思い出したように行くトイレと……くらいしかできないんだ。なんだか今嘆いたりすると、この後余計につらい思いをする気がして。


「カメラを持ってついてきなさい。望遠レンズは必要ないかな、被写体には寄れるから」

「はい」


 呼び出された四日目――行き先は……。


「ニカ……」

「その声……ソドム……にゃ?」


 目の高さでぐるぐるに包帯を巻いていて。(血が滲んでいる。)そっか、今度は()()を撮れっていうことですね。


「ソドム、外してほしいにゃ…………いろんなところが痒いんだにゃ……」


 ベッドに縛りつけるためのベルト……なるほど、この部屋は()()()()()()()()()に用意されてるのか。なら、顔だけじゃなくベッド全体が写るように撮ったほうがいいかな?


「ごめんねニカ、私外す権限ないから」

「……そうかにゃ」


 権限がないなんて、言われてないけど。


「写真、撮らせてもらうね。それが私の仕事だから」

「…………わかったにゃ」


 ニカはどうして、こんな撮影を受け入れているんだろう。まぁ、拒否なんてできないだろうけど……なんで、()()()()()()()()()()いるんだろう。(仕事だから、って言ったのは心を少しでも楽にするため?)あれ? ニカ……? ニカだねここにいるの。うん、赤い目はなくなっちゃったけど……ニカだよここにいるのはさ。


「生きてたんだ……ね。よかった。ごめんね」

「…………仕方ないにゃ。仕掛けたのはニカだし……。目が治るまでの我慢にゃ……」

「そっか。早く治るといいね」


 私、もしかして今「ソドムが謝ることじゃないにゃ」という返答を……期待してた? うん、こんなこと思っちゃう時点で、期待してたね……。私……最低だ。(()も低いという評価をすることは、おこがましいのだろうか?)


「よし、そのくらいでいいだろう」

「はい」


 ずっと黙って背後に()()()()()()()兵隊さんがそう言ったから、私はニカの部屋を出ていくことになった。


「ソドム」

「なに? ニカ」

「また……来てにゃ」

「うん」


 今までの人生で、もっとも自信のない「うん」だったと思う。


「次は――」

「リリールの撮影ですか?」

「そうだ。いいことだ、自分のやるべきことをちゃんと理解しているというのは」


 反吐が出る。なんて言葉が私の頭をよぎったけど、それは多分、自分を肯定したいだけ。(或いは否定したくないだけ。)

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