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ソドム・パラノイア  作者: Y
HELL HATE HARDCORE
286/301

263:写真を撮りなさい

 リリールはニカの目を二つとも抉り、握りつぶした。あれ? 目って再生するんだっけ? 確か、時間かかるけどするんだよね。(こんなことで、ああ、もっと、ちゃんと、勉強しておけば良かったって思うなんて。)


「リリール! もうやめて! もうやめて!」

「この糞猫! 私に、私に恥ずかしい思いをっ! させやがって!」


 頭ばっかり蹴ってる。リリールは、()()()だ。


「リリール!」

「うるさいわね! 元はと言えばあんたが原因でしょ!」

「え?」

「あ……」


 手が、止まった。ニカ……動かないな……生きてるのかな……。


「い、今のは、う、嘘よ! 勢いでつい言っただけで……そんなこと思ってないわ……」

「こ、来ないで」

「私は、あんたのことを思って」

「来ないで!」


 リリール、どうしてそんなに私を見つめるの? なんか怖いよ……。


「私はあんたのことを思って……思ってるのに!」

「リリール?」


 ガンガンガン、リリールが自分の頭を壁に打ちつけはじめる。何度も何度もガンガンガン。


「や、やめよリリール……私怒ったりしてないから」

「ソドム、ソドムソドムソドムっ……あなたは私を赦してくれるの?」


 聞こえてたよね? なんで聞こえてるのに何回も頭ぶつけてから振り向いたの? 話が聞けるならさ、そんなことやめてよ。


「許すとかそういうのじゃなくて、そもそも怒ってなんて――」

「ならやっぱりだめじゃない!」


 え、意味わからないよ。ねぇ、なんでそんなにガンガンガンガン。


「やめてよ! ねぇ、リリール!」

「よし、そこまでだ」


 光? 扉が開いた? あ……兵隊さんが来てくれ……来てくれ?


「止めてください! リリールがっ! リリールが!」


 今、優先するべきことを()()()()()。余計なこと考えてたらだめ。だって、まだガンガンガンガン――――。


「ああ、助けてあげよう。もうしばらく後でね」

「なに言ってるんですか? 早く助けないと、リリールが!」


 本当に、なに言ってるんですか?


「君は写真を撮るんだ。カメラを持ってきてるだろ?」

「なに、言ってるんですか?」


 ガンガンガンガン、音はやまない。そりゃそうだよね、誰も止めないんだもん。


「ほら。君が写真を撮らないと、我々は助けることができないよ?」

「え、え……なら、なら撮ります!」


 なに、言って……いや、そんなことは後! 後! 今はなにをしても助けてもらわないと! そうだ、私の鞄どこだろ……あ、あった。カメラ……壊れてないね……。よし!


「しっかり写すんだよ」

「う……」


 ファインダーを覗いたら、リリールの目がよく見えた。すごく見開いた目が。(リリールがこっちを見た。だから私は、その瞳からピントをずらしてシャッターをきった。)


「もう一人も撮影してあげるといい」

「ニカ……」

「やはり素晴らしいね君は、こんな時でもカメラを操作できるくらいには、冷静さを保っている。採用したかいがあったよ」


 レンズを通して見える、ボロボロのニカ。空っぽの目の穴に血があんなに溜まって……。


「よし、しっかり撮影したね。お疲れ様。()()()()は我々の仕事だ、君は休んでいるといい。ああ、()()()()は先は撮影したらだめだよ?」


 あれは本当に助けてるのだろうか、頭をぶつけるのをやめないリリールを無理矢理押さえつけて……。

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