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ソドム・パラノイア  作者: Y
HELL HATE HARDCORE
283/301

260:少女寮と吸血鬼

 私達三人は兵隊さんに言われたとおり、森の奥へと続く道を進む。


「道、あってるわよね……」

「あってると思うにゃ……」

「一本道だもんね」


 どんどんどんどん、森の奥へ。木の密度は高まり、私達の影は道に映らなくなっていく。うーん、兵隊さんに着いてきてもらえばよかったかな……。これ、どこまで行けばいいかわかんない気が……。


「あ! 小屋……だ……」


 唐突に道は終わる。だって、小屋が道を塞いでしまっているから。


「少女寮……ってなによ」

「私達のことかな?」


 黒っぽい木で作られた小屋。その中央にある扉からはみ出るほど大きく、白いペンキで描かれた『少女寮』の文字。


「入る……しかないわよね」

「う、うん」

「なんか露骨にやばいにゃ」


 それでも私達が扉を開けることにしたのは、ここが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という安心感だった……のかもしれない。


「うわっ!」

「な、なんにゃ!」


 中に入った時――――二人は驚いて、私は妙に冷静だった。開けた部屋の中、蝋燭に照らされている壁にたくさんの、すごく細かい赤い文字が描かれていても。


「きっと私達へのメッセージかも。なんかの訓練かもしれないね」

「ソドム、あんた度胸あるわね……」


 なんか全然怖くない。それに、これよりも真っ赤に染められた場所を見たことある気がする。今まで悪い夢を見たことは何回もあったから、()()()()()だと思うけど。


「課題なら読むしかないかにゃ……」

「うん、えっと……あれ? 多分これ、深い意味ないよ」

「なによソドム。さっきは訓練かもとか言ってたじゃない」


 だってさこの文字……物語になってるんだもん。ありえるはずもない、吸血鬼のお話。きっとこれ普通の小説だよ。


「なによこれ、吸血鬼……典礼……言語? なにこれ、意味がわからないわ。どういうことなの?」

「……気持ち悪いにゃ」

「うーん」


 びっしりと部屋全体。描かれている文字はたくさんあるんだけど……なんか上から擦ったみたいになってて、()()()()()()()()()。でも、感情的になって消したって感じはしない。吸血鬼だとかそういうちょっと怖い言葉が残るように、意識して擦ったような……。


「もしかして、この部屋にいた人が前に書いたのかな? 閉じ込められてやることがなくて暇で……とか?」

「な、なに言ってんのよ! なんで寮に閉じ込められないといけないのよ! まさかソドム、こ、この赤色は血だって言いたいの?」

「え、違う違う! 血だったらもっとどす黒くなるでしょ――――」


 リリール、想像力豊かだな……なんて考えている後ろで聴こえた、ギギギギ、バタン。ガチン。これは、ひとりでに扉が閉まった音。

 

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