表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソドム・パラノイア  作者: Y
HELL HATE HARDCORE
282/301

259:遠くを見るレンズ

 メメメスさんはすごく褒めてくれた。私がトランプ持ちになることを。(褒めてくれるって、()()()()()()()()()()()なのかな?)


「ほんとにがんばったな」


 その言葉がどこか寂しそうで。(私は本当にがんばったのだろうか?)




 翌日、私はアミさんのお店に向かう。メメメスさんが、私にフィルムをプレゼントしてくれると言ったから。なんだかその気持ちが、お別れを強調しているようで――――私は何度も、メメメスさんの顔を見てしまうんだ。


「これは私からの餞別だ」


 プレゼントの理由を知ったアミさんが、長いレンズをくれる。ああ、これもお別れのプレゼントか。


「これ……」

「望遠レンズだ。トランプ持ちになればいろいろなものを見ることになる。息抜きに、遠いものを撮りたくなる時も多いだろう」

「あ、ありがとござます!」

 

 また変なお礼の言い方しちゃったな。


「私はまた……クリスマスに合わせることができなかったな」


 私の誕生日は不明。だからクリスマスが誕生日代わり。


「クリスマスじゃないのに、こんなに素敵なものもらえるのはすごいことだと思うよ」

「そうか。おまえは本当にいい子に育ったな」


 なんか、アミさんに褒められると心がじわっとする。


「この前やったカメラの操作は、覚えたかね?」

「うん、メメメスさんに教えてもらったから」


 私がそう言うと、メメメスさんは腕を組んで三回頷いた。でも今日は、ずっと無口だ。


「そう悲しむなメメメス。休暇には戻ってくる」

「そ、そうですね。よし、ソドム! 私はこのカメラバッグを買ってやろう! これなら着替えも入るし!」

「うひひ、メメメスさんありがとう」


 私の一週間。旅立つ前の、()()()()()()()()()()()()()としての、最後の一週間。それは本当にあっという間で、思っていたより感情的になる暇がなくて。


「行ってきます!」


 その一言に、すぐにつながってしまった。



 


 リリールとニカと合流して、馬車で寮に向かう。その間私達は、ほとんど会話をしなかった。(だから私はずっと、馬の気持ちを想像しようとしていました。)


「すごい、ここがトランプ持ちの寮……」

「流石に緊張するにゃあ!」


 高い鉄の柵の向こう側は広い運動場と、森。建物もいくつかあって……。あ、あそこが入り口かな。うお……なんか強そうな兵隊さんが二人も立ってる。


「私が代表して挨拶するわ!」


 リリールの後に私達は続く。よろしくねリリール、私緊張してちゃんと喋れなそうだよ!


「本日配属になりました、り、リリールです! おちぇわになりまっち!」


 ああ、噛んじゃった。リリール顔真っ赤……。


「ん? ああ。ハンプティの三人だね。学生証を見せてくれるかな?」

「は、はいっ!」


 私達三人が取り出した学生証に、兵隊さんが端末をかざす。


「ふむ」


 ふと思う。あの端末に、カメラがついてたら便利そうだなって。でもそんな小さいカメラ……作れるのかな? あ、でも110フィルムだっけ、アミさんのお店に小さいカメラあったし意外と…………うーむむ……。


「よし、問題ないよ」


 ()()()()()()()()()()後、兵隊さんが後ろの門を開いてくれる。ここを過ぎたら私達は……。


「ようこそ、トランプ兵の世界へ」

「あ、ありがとございまちっ!」


 ああ、リリールまた噛んじゃった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ