258:平和の引き算
スミレ先生がいなくなった代わり新しい先生が来て、なんだかんだ二週間がたって――――私の毎日は普通に戻りましたとさ。(私にとって、いじめられなくなった日々が普通なのかはわからないけど。)でも、リリールと、ニカは……。
「今日までありがとにゃ!」
「いろいろ騒がせて申し訳なかったわ。割り切れないこともあるけど、まぁそうね、なんだかんだ嫌いじゃなかったわよ、このクラス」
二人は、正規軍入りが決まった。トランプ持ちの人に保護してもらった時に、いろいろ話があったみたいで。だから今日は、お別れ会。
「あー。もう一人、お別れすることになった生徒がいる」
だ……誰だろ。ベストリーカかな? それともニカの班の誰かかな?
「ほら、落ち着け落ち着け。せっかくクラスから三人もトランプ持ちが出るんだ。しかもこのクラスは、まだハンプティだろ? これはすごいことだ! 誇りを持って送り出そうじゃないか! ほら、拍手!」
先生に言われて拍手。確かに、幼年学生から一気に三人も正規軍入りなんて聞いたことないよ。
「よし、拍手やめ! ではもう一人、我がクラスから巣立つ生徒を発表する」
先生、来たばっかりなのにもう、我がクラスだなんて!(なんか私達を大切にしてくれてる感じして、嫌いじゃないかも。)
「ソドム、前へ来い」
「えっ、えええええええええええええええええええ!」
私と同時にクラスの何人かが、声を上げた。いや、うん、えっと……えええええええええええええ! うわ、先生めっちゃこっち見てる。間違いじゃ……ないんだね……。
「今朝、要請があった。ご家族には今、報告がいってるはずだ! よし、細かい話は後だ! みんなもう一度、拍手!」
こんな拍手されたの、はじめてだな。
「うひひ」
「ソドム、嬉しそうね」
「うん、リリールも」
「ソドムも来るとは思わなかったにゃ! にゃはは、面白くなりそうだにゃあ!」
「なによ、私だけじゃ不満だっての?」
リリールとニカの雰囲気は、悪くない。きっとあの後、二人だけの話を二人でしたんだろう。
「さあ! 堅苦しい話は終わりだ! お前ら準備は出来てるな!」
先生の合図で、生徒たちが全員立ち上がる。
「こっそり準備した一週間! 俺たちの英雄のお別れパーティーをはじめよう!」
嘘みたいだな。みんなで一人を殴って蹴って、おもらしさせた教室だとは思えない。(私達三人がいなくなれば、平和になるからかな……なんて、思ってしまったけど、それは違うよね。)




