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ソドム・パラノイア  作者: Y
HELL HATE HARDCORE
277/301

254:試練症

 ニカは気絶……してなかった。血だらけでゆらりと立ち上がるその姿は、体のずっと大きな中学年の人たちより――――。


「ふーっ! 待つにゃ! このうんこ上級生!」

「ああ? ぐあっ!」


 速っ……なに今の……。


「おい! 大丈夫か――ぐおっ!」


 一人一撃。簡単に上級生を倒していくニカ。まさか――これが、試練症……!


「おい、やべぇぞ! 逃げろ!」

「これだから試練症持ちはやっかいだぜ! くそっ!」


 逃げ出した上級生を何人か捕まえて、ぶっとばす。


「二カ! 後ろー!」

「ぎゃっ!」


 背後から石の塊でニカの頭を狙った上級生は、振り下ろす間もなく一回転して地面に叩きつけられる。


「にゃは、ソドム! ありがとにゃ!」

「え、う、うん」


 笑顔。私はこの時なぜか、ニカのことを、可愛いと思ってしまった。


「ああ! しまったにゃ!」

「な、なに突然!」

「試練症出してしまったにゃ……! ソドム、頼むにゃ、先生に内緒にしといてくれにゃ……ってにゃああああ! ソドムに無駄に弱みを教えてしまったにゃああああ! にゃあああああ、これだから試練症は困るにゃ……」

「ひひ、うひっ」


 しまった、ニカが突然取り乱したから思わず笑っちゃった! あれ、怒られない? あれ、あれ?


「ソドム! 交換条件を言えにゃ。内緒にしてもらう代わりに、おまえの願いを一つきいてやるにゃ!」

「えっと……その前にさ、上級生にバラされたら同じじゃない?」

「にゃ? おまえやっぱり面白いにゃあ! 安心するといいにゃ。軍学校では上級生が下級生に手を出すのは厳罰! だからあいつらから漏れることはないにゃ!」

「そっか」


 って、そんなこと言ってる場合じゃない! これ、いじめを終わらせるチャンスだよね!


「あ、あのさ。私達へのいじめ、やめて――」

「だめにゃ」

 

 うわ、この人ガチのいじめっ子だ!


「お願いは一つまでにゃ、おまらは四人。だからダメにゃ」


 そ、そういうルールか……。


「じゃ、じゃあ……」


 私へのいじめをやめて。その願いはなぜか、言葉にならなかった。


「リリールと……じゃなくて、私達の班と、六七班と勝負して! みんな一対一で! それで私達のほうが勝ちが多かったら、お願い四つに増やして!」

「なんにゃそのメチャクチャなお願いは」


 た、確かに! でも…………なんか、こうしないとリリールの心が折れたままになってしまう気がしたから。うう、勝手にこんなこと言って、みんなに怒られるかな。ああもう! こんな状況じゃ冷静に考えれないよ!


「ま、面白そうだからやってやるにゃ」

「あ、あと待って! 勝負の日まで時間、時間ちょうだい! 一ヶ月、えっと二週間でいいから!」

「お願い事二つ目にゃ……」


 わ、私わがまま!


「あ、あともし他のみんなが嫌って言ったら……この話はなしで……」

「三つ目にゃ……」


 どうしちゃったの今日の私! でも――――――――――――――――なんだかんだ、ニカは私の話を全部聞き入れてくれた。


「ありがとうニカ……」


 そして私は気づく、私が、聞き入れてもらえると思ってわがままをぶつけていたことに。

 

「さて、リリールに話にいくにゃ」

「え、その話は私が――」

「はぁ?」


 怖い……。ニカの強く赤い瞳に、私はそれ以上わがままを言うことができなかった。

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